特許法

2026年1月13日

目次

特許法の目的

「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」(特許法第1条)と定義されています。

特許の技術分野の分類

国際特許分類(IPC)

世界共通分類です。

FI(File Index)

日本国特許庁が独自に設定した技術分類コードです。
特許情報プラットフォーム(J-Planet)で中国特許公報の一部は検索可能です。
IPCを細分化しているものとなります。

Fターム

日本特有の分類で、FIを発明の目的、用途、材料などの観点から分類されています。
分類記号によって特許出願を検索可能です。

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)

J-PlatPat(ジェイプラットパット)は、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する無料の産業財産権情報データベースで、特許・実用新案・意匠・商標に関する公報や審査状況などを、インターネット経由で誰でも検索・閲覧できるプラットフォームです。
技術動向調査、他社権利の確認、研究開発の効率化、訴訟リスク回避などに役立ち、国内外の膨大な情報を「ぷらっと」「ぱっと」見つけられるように設計されています。

国際特許分類(IPC): 発明を大分類(セクション、クラス、サブクラスなど)で大まかに分類。
FI(File Index): IPCのコードに、日本の技術事情に合わせて「展開記号」や「分冊識別記号」などを付加し、より細かく分類。
Fターム(File Forming Term): FIの各コードに対し、「目的(Purpose)」「材料(Material)」「手段(Means)」「用途(Application)」など、様々な「観点」を設定し、さらに細かく分類。

FIで大まかな技術分野を特定し、Fタームで目的や用途、手段などの観点から発明の核心部分を多角的に絞り込むことで、より精度の高い先行技術調査が可能になります。

発明の定義

「発明」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(第2条第1項)と定義されています。

「自然法則」とは、自然界において一定の原因によって一定の結果となる、経験的に見出される、科学的な法則を意味します。
自然法則であるか、高度であるかによって、発明かどうかの判定が行われると言って良いでしょう。

発明者

自然人に限られます(法人が発明者になることはできません)。

発明者と特許を受ける権利者は必ずしも同一ではありません。
発明者≠特許出願人

特許出願を受ける権利

共有の場合は、他の共有者と共同でなければ特許出願をすることはできません。
*無断で出願すると共同出願違反となり、拒絶査定・無効の理由になるが、異議申立の理由にはならない。
また、他の共有者の同意を得なければ、その持ち分を譲渡することもできません。

発明者から特許を受ける権利を譲り受ければ、法人でも特許出願が可能です。
予め承継を受けることを取り決めておけば、権利の承継手続きは不要!

特許権の共有

共有者の同意が必要なケース
・第三者に専用実施権を許可(特許庁に登録が必要)
・第三者に通常実施権を許可
・自己の持分を譲渡(特許庁に移転の登録が必要)
・質権を設定

職務発明

職務発明の要件

①従業員等(役員含む)がした発明である
②使用者等の業務範囲に属する発明である
③従業員等の現在、あるいは過去の職務によるもの

使用者等

・特許を受ける権利の予約が可能
・特許権の承継等の予約が可能(その場合は承継手続きは不要)
・通常実施権を有する

従業者等

相当の金銭その他経済上の利益を受ける権利を有する

特許を受ける権利

従業者が職務発明を完成しても、就業規則や契約で「あらかじめ」使用者に特許を受ける権利を原始的に帰属させると定めていれば、特許を受ける権利は発生した時点から使用者(会社)に帰属し、従業者はその権利を持ちません(特許法35条3項)。

発明の「完成」が退職後であれば、その時点で「使用者等と従業者等」の関係が終了しています。たとえ企業在籍時の職務に関連する発明アイデアであっても、職務発明とはなりません。
発明の「完成」が異動後であっても、その発明の「職務への従事」が企業在籍中に行われ、かつ発明が従事していた職務に属するものであれば、職務発明となります。
これは、日本の特許法第35条の要件(使用者等の業務範囲に属し、かつ従業者等の現在又は過去の職務に属すること)を満たすためです。

先願調査(先願技術調査)

先行技術調査で通常用いられる主な情報源は以下の通りです。

  • 特許文献: 公開特許公報、特許掲載公報、実用新案公報、意匠公報など。
  • 非特許文献: 学術論文、技術雑誌、業界紙、製品カタログ、インターネット上の情報など

先願調査を行なう目的

・研究開発の競合防止
・他者への特許権侵害の有無
・紛争防止
・新しい発明の着想を得る
・競合他社の技術力や開発動向のチェック

調査可能なもの

特許掲載情報、公開特許公報によって公開されたもの
*出願日から1年半経過しないと公開されないため、他社の未公開特許出願(秘密にされている出願)は調査対象となりません

特許法に規定する判定

特許発明の技術的範囲(権利の及ぶ範囲)について、特許庁に対して「判定」を求めることができます(特許法第71条第1項)。
これは、他人の製品が自分の特許権を侵害するかどうか、または自分の製品が他人の特許権を侵害するかどうかなど、中立・公平な立場で特許庁の見解(公的見解)を示す「判定制度」という仕組みです。
判定を請求できるのは利害関係人に限られず、法律上の利害関係がなくても(誰でも)請求可能です
判定は当事者に法的拘束力を持ちません

特許要件

発明が、
①産業上利用できる発明であること(利用可能性)
②新しいものであること(新規性)
③容易に考え出すことができないこと(進歩性)
④先に出願されていないこと(先願)
⑤公序良俗に反しない、公衆衛生を害さないこと

新規喪失性の例外規定の適用は公知となったときから1年以内に出願しなければならない。

新規性

特許出願する発明が「これまで世の中に知られていなかった、新しいものであること」を指す。
特許出願前に公然と知られていたり(頒布・インターネット公表など)、実施されていたり、刊行物に記載されていた発明は新規性を失い、特許を取得できませんが、一定の手続きで救済される「新規性喪失の例外規定」もあります。

新規性喪失の例外規定

特許新規性喪失の例外規定(特許法第30条)は、発明者自身の行為(論文発表、展示会出品、セミナーでの開示など)により公開された発明について、その公開から1年以内に特許出願すれば、その公開によって新規性が失われないとみなす制度。
適用には出願後30日以内に「例外適用証明書」を提出する手続きが必要

特許出願手続き

特許出願の流れは、発明の準備・調査から始まり、特許庁への出願書類提出(特許出願)、出願公開(1年6ヶ月後)、審査請求を経て実体審査、特許査定(または拒絶査定)、そして特許料納付による設定登録で特許権が発生します。
特に重要なのは、審査を受けるために出願から3年以内に審査請求が必要な点と、その後の審査官による審査で特許性(新規性、進歩性など)が判断されることです。

出願書

複数の発明を一つの出願に含めることが可能!
発明の単一性(それらの発明が「同一のまたは対応する特別な技術的特徴」で結びつき、単一の一般的発明概念を形成している)を満たす必要あり

特許または実用新案登録出願の出願人は、要約書を願書に添付して特許庁に提出することが義務づけられています。
要約書には要約と選択図を記載します

発明の単一性

複数の発明が一つの願書で特許出願できるための要件で、それらの発明が「同一の又は対応する特別な技術的特徴」(STF)を有し、単一の一般的発明概念を形成するように「連関」している必要があります。
この連関は、中間体と最終生成物(構造が密接に関連)や、「物」とその「物」を使用する方法(方法が物の特有な性質・機能を利用)などで見られ、「特別な技術的特徴」(先行技術に対する貢献を示す新規な特徴)が共通していることで成立します。

明細書

当業者が、その発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載しなければなりません。
発明の記載省略は不可。
特許請求の範囲外の発明の記載も可能です。
願書に「明細書及び必要な図面」を添付する代わりに、先にされた特許出願を引用する旨を記載することで出願が可能です
特許出願人が特許出願時に知っている、請求項に係る発明に関連する文献公知発明がある場合、その文献公知発明が記載された刊行物の名称などの情報を特許明細書に記載する義務があります(特許法第36条第4項第2号)。
これは「先行技術文献情報開示要件」と呼ばれ、審査官が新規性・進歩性を判断する上で必要な情報を提供するためで、記載がないと拒絶理由になる可能性があります。

特許請求の範囲に記載する発明は、「発明の詳細な説明」に記載された内容に基づいていなければならず(サポート要件、特許法36条6項1号)、記載内容が詳細な説明の範囲を超えていると、特許は受けられません

図面

明細書で十分に理解できるときは必ずしも必要ではありません。

出願日

特許庁に願書を提出した日です。

特許出願などで書類に不備(「特許を受けようとする旨の表示がない」「出願人の氏名・名称がない」「明細書がない」など)があった場合、特許庁から補完(補正)を求める通知が届き、指定された期間内(通常2ヶ月)に手続補完書を提出して不備を直せば、手続補完書を提出した日が新たな「出願日」として認定される、という日本の特許法・商標法における重要なルールです(特許法第38条の2第6項、商標法第5条の2第3項など)。

補完

特許出願で「補完をすることができる旨の通知」がされた場合、出願人は指定された期間内(通常2ヶ月以内)に不足する事項(特許を受ける意思、出願人情報、明細書など)を補完(手続補完書を提出)すると、手続補完書を提出した日が新しい出願日(認定出願日)として扱われ、元の願書提出日が出願日として認定されるための手続きです(特許法第38条の2第6項)。
この補完が期間内にされなければ出願は却下されますが、補完が成功すれば、元の出願としての地位を保ちつつ、不備を解消し、特許出願日を確保できる、実質的な出願日の認定がなされます。

出願公開

出願日から1年半を経過したとき
公開特許公報に掲載されます。

出願審査請求

出願日から3年以内
*出願日からこの期間に出願審査請求がない場合は、特許出願を取り下げたとみなされます。
特許出願の審査請求は、特許出願人だけでなく、「何人も(第三者も)」行うことができます(特許法第48条の3第1項)

特許出願の実体審査

特許庁の審査官が、出願された発明が特許法の要件(新規性、進歩性など)を満たしているか、技術的・内容的に審査することです。
この審査を受けるためには、出願日から3年以内に出願審査請求書を提出し、手数料を納付する必要があり、請求がなければ出願は取り下げられたとみなされます

早期審査・優先審査制度

目的: 審査を迅速に進め、早期に権利取得を目指す。
早期審査: 「出願人からの申請」と「一定の要件」が必要で、申請料がかかることが多いです。
優先審査: 早期審査と似ていますが、特許法第48条の6に根拠を持つ制度で、やはり申請と要件が必要です。
関連制度: 特許審査ハイウェイ(PPH)など、海外の特許庁との連携で早期審査を促す制度もあります。
出願公開請求書により行います。
なお、出願公開請求は取り下げることができません。
また、請求書の提出後に、出願が放棄、取り下げられても出願公開は行われ、出願から1年4月以内であっても、要約書の補正はできません

特許料納付

原則: 査定謄本送達日から30日以内に第1年~第3年分の特許料を一括納付する。
期間延長: 30日以内に「期間延長請求書」を提出すれば、さらに30日(計60日以内)に延長できる(手数料が必要)。
30日経過後: 期間延長請求書は提出できないが、特許庁から送られてくる「特許料納付の催告(行政サービス)」後に、出願却下処分がされる前であれば納付可能。
注意: 30日経過後は「却下処分がされる可能性」があり、迅速な納付が必須。

存続期間

出願日から20年経過まで
ただし、医薬品・農薬など特定分野では、審査や承認に要した期間を補償するため、最長5年まで存続期間を延長できる制度(期間補償のための延長登録)があります。
許可・承認のための行政手続きに要した期間を上限とし、最長5年まで延長期間が設けられることがある

4年目以降は、前年中に特許料を納付することが必要となります。
複数年分まとめて納付も可能。
納付忘れの場合も、6ヶ月以内であれば、倍額支払うことで追納できます。

特許権の「存続期間」自体を減免する制度はなく、特許権の維持に必要な「特許料」について、中小企業、個人(市町村民税非課税者など)、大学などを対象に、審査請求料や特許料(1〜10年目)が半額〜1/3に軽減・免除される制度があります。

実施権と譲渡

通常実施権

当事者同士の契約のみで効力が発生します。
内容、地域、期間を限定して定めることができます。
特別な申請や登録などは必要ありません。 ただし、通常使用権を特許庁に登録することも可能です。
登録は発生原因ではありませんが、登録によって”第三者に対抗”することができることになるという、「第三者対抗要件」としての性質を持ちます。

専用実施権

特許庁に登録しないと効力は発生しません。
内容、地域、期間を限定して定めることができます。
2人以上の異なる者に対して設定範囲が重複した複数の専用実施権の設定をすることができない。
特許権者の承諾を得た場合には,移転することができる。
特許法100条1項により、専用実施権者は、自己の専用実施権を侵害する者(またはそのおそれがある者)に対し、単独で差止請求(侵害行為の停止または予防の請求)を行うことができます。
これは、専用実施権が独占的な実施権であり、その権利を保護するために特許権者と同等の「物権的請求権」として認められているためです。
特許権者は専用実施権を設定した範囲では自ら特許発明を実施できなくなりますが、特許法第100条に基づき、その侵害行為に対して差止請求権を行使できます。

仮通常実施権

特許出願中(特許権成立前)に、特許を受ける権利を持つ人(出願人)から許諾を得て、その発明を実施できる権利のことで、特許法で定められた制度です。
特許が登録された際には、自動的に通常の(非独占的な)実施権に移行するため、ライセンシー(実施権者)は事業準備を安心して進められ、出願人の権利が譲渡されても保護される(対抗できる)

特許権の譲渡

特許庁に移転の登録をしなければ効力が発生しません。

特許権の放棄

特許権者は,通常実施権を許諾した後で特許権を放棄するときには,その通常実施権者の承諾を得なければならない。

発明の実施

物の発明の場合

その物の生産、使用、譲渡(有償・無償を問わない。電気通信回線を通じた提供を含む)、
貸し渡し、輸出、輸入、並びに、譲渡及び貸し渡しの申出をする行為(譲渡等のための展示を含む)

方法の発明の場合

その方法の使用をする行為
・物を生産する方法の発明の場合
その方法を使用する行為の他、その方法により生産した物の使用及び譲渡等をする行為。

拒絶理由

特許出願が新規性、進歩性(容易に発明できないか)、実施可能要件(明細書に記載された内容で実施できるか)、サポート要件(請求項に記載された発明が明細書に裏付けられているか)、明確性(請求項の記載が不明瞭でないか)、先願主義(他人が先に発明していないか)などの特許要件を満たさない場合に、特許庁の審査官が特許を認めない理由として通知するものです

明細書に特許請求の範囲に含まれない事項(新規事項)を記載したり、記載事項が不明確だったりすると、特許法第36条第6項違反として拒絶理由が通知されます。

拒絶理由通知への対応方法

意見書(反論)

審査官の指摘が誤りであると考える場合、根拠を示して反論します。
通知受領後60日以内に提出する必要があります。

新規事項の追加禁止

意見書で説明を補足することは可能ですが、当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に記載されていなかった新しい技術的事項(新規事項)を、補正によって追加することはできません。

補正との関係

明細書等の内容を修正・追加したい場合は、意見書の提出だけでなく、特許法第17条の2に基づく手続補正書の提出が必要となります。
拒絶査定不服審判と同時に行う補正には、記載要件や目的外補正の禁止など、一定の制限が課されます。

手続補正書(修正)

権利範囲を狭めるなど、指摘された点を修正して拒絶理由を解消します。
この場合、補正内容とその効果を説明する意見書も併せて提出します。

審査官面談

審査官に直接発明や補正案について説明し、理解を求めることも可能です。

分割出願

複数の発明が含まれている場合などに、一部を別の出願として分割します。

出願の取り下げ

権利化が困難と判断した場合。

意匠登録出願に変更

特定の条件下で意匠登録出願に変更可能です。
主な条件は
・特許庁に継続中であること(最初の拒絶査定謄本の送達から3ヶ月以内など)
・出願人が同一であること
・変更する意匠が元の特許出願の明細書等に記載されていること
元の特許出願の出願日に遡って意匠登録出願がされたものとみなされます。

最後の拒絶理由通知

最初の拒絶理由通知の応答時の補正によって通知することが必要となった拒絶理由のみを通知する拒絶理由通知。
これを受けた場合、その応答として、請求項の削除、限定的減縮、誤記訂正、明瞭でない記載の釈明(拒絶理由に関連するものに限る)などの限定された範囲でのみ手続補正(補正書の提出)を行うことができます。
これは、通常の拒絶理由通知への応答とは異なり、新規事項の追加が厳しく制限されます

補正手続き

実施可能なタイミング

(1)出願日から第1回目の拒絶理由通知に対する応答期間内
*拒絶理由通知が通知されることなく特許になった場合は、特許査定の謄本の送達日まで
(2)2回目の拒絶理由通知に対する応答期間内
(3)拒絶理由通知を受けた後の文献公知発明に係る情報の記載についての通知に対する応答期間内
(4)拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時

補正範囲

願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲を超える補正(新規事項の追加)をすることはできない。
範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正等だけ。
最後の拒絶理由の通知がなされた後は、特許請求の範囲は請求項の削除、誤記の訂正等のみ。
明細書や図面については補正可能。
補正が認められた場合は、出願時にしたものとみなされる。

査定

特許査定

出願審査請求によってなされる、特許の査定。
謄本送達日から30日以内に特許料を一時に納付する必要があります。
支払わない場合は特許出願自体が却下されます。

拒絶査定

拒絶査定の謄本送達日から3ヶ月以内であれば、拒絶査定不服審判を請求することなく、分割出願ができます。

審判

訂正審判

特許権の設定登録後に請求することができる。
侵害行為などの訴訟継続中も実施可能である。

拒絶査定不服審判

拒絶査定がなされた際に、特許出願人のみが拒絶査定に不服を申し立てることができます。
審査官の指摘した拒絶理由に対応するため、「請求項の削除」「特許請求の範囲の限定的減縮」「誤記の訂正」「明瞭でない記載の釈明」に限定される

拒絶査定の謄本送達日から3ヶ月以内に審判請求が可能です。
同時に、明細書、特許請求範囲、図面の補正を行った場合、拒絶査定をした審査官により再審査がされます。

拒絶審決に対しては東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)に審決取消訴訟を提起できます。
拒絶審決に対する訴え(審決取消訴訟)の管轄裁判所は、知的財産高等裁判所(東京高等裁判所の特別支部)の専属管轄です(特許法178条1項, 知的財産高等裁判所設置法2条2号, 裁判所)

拒絶理由が通知されただけでは審判を請求することはできません。

前置審査

拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書や図面などの補正(前置補正)があった場合、特許庁長官はまず審査官にその補正の適否を含めて審査(前置審査)させます。
審査官が補正により特許できると判断すれば特許査定、できなければ特許庁長官に報告され、審判官による審理(審判)へ移行します。

特許無効審判

複数の者が共同して請求できます(特許法第132条1項)が、請求できるのは「利害関係人」に限られ(特許法第123条2項)、共同請求した場合は審判請求人全員に合一的に審決が確定する(一部の請求人だけを相手取っても確定しない)という特殊な性質を持ちます。

特許請求項が複数ある場合に、請求項ごとに請求(申立て)することができます(特許法第123条第1項)

特許権が消滅した後でも請求可能。

無効審決が確定した場合は、最初から特許権がなかったものと見做されます。
無効審決に対しては東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)に審決取消訴訟を提起できます。
東京高等裁判所の専属管轄(特許法178条1項)であり、その特別の支部である知的財産高等裁判所が第一審として取り扱います(知的財産高等裁判所設置法2条2号)

特許無効審判の審決に対する取消訴訟の提起期間は、審決(または審決があったことを知った日)の送達(通知)があった日から30日以内と、行政事件訴訟法よりも短く定められています

棄却審決を受けた審判請求人は、審決の取消しを求めて「審決取消訴訟」を提起できますが、相手方(被請求人)は「被告」ではなく「被告特許庁長官」となり、特許庁長官が代理人として対応します。
棄却審決を受けた審判請求人は「原告」となり、「被請求人(特許権者など)」を被告として訴えることは原則できません。

特許の異議申し立て

誰でも実施可能
*共同出願違反や冒認出願については申し立てることができません。
*登録前(出願審査中)は「拒絶理由通知」への応答や、審査官への「情報提供」が主な手段となります
特許掲載公報の発行日から6か月以内に誰でもすることができます。
取消し決定した場合は、最初から特許権がなかったものと見做されます。

先使用権

他者がした特許出願の時点で、その特許出願に係る発明の実施である事業やその事業の準備をしていた者に認められる権利
他者の特許権を無償で実施し、事業を継続できるとすることにより、特許権者と先使用権者との間の公平が図られています
特許出願前に日本国内で、その発明を「知って」いて「業として」実施していた場合に成立します

先使用権の成立要件(特許法79条)

・独自の発明または承継
特許出願の発明の内容を知らずに自ら発明した、またはその発明者から知得したこと。
・実施・準備の事実
特許出願の際(優先権主張日)に、現に日本国内でその発明の実施またはその事業の準備をしていたこと。
・事業の準備の具体性
「事業の準備」とは、即時実施の意図があり、それが客観的に認識できる態様・程度で表明されている具体的な行為(例:設備投資、資金調達、試作品製造など)を指します。
・事業の目的の範囲内
実施していた発明および事業の目的の範囲内に限って権利が認められます。
モデルチェンジなどで実施態様が変わっても、同一性を失わない範囲なら及ぶ場合があります。
・継続性
先使用権が成立した時点から、現在(差止請求を受ける時点)まで継続して実施していること(短い中断は許容される)。
・不正の目的でないこと
他人への不正競争目的ではないこと。

特許権の侵害

特許品を購入した場合は、特許権が消尽します。
ただし、侵害品であることを知らないで購入したものが業として販売した場合は、侵害となります。

侵害行為の過失を立証する必要はありません。

損害賠償請求をするにあたっては、相手方を特定して事前警告する必要はありません。

特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(特許法第100条第1項)

特許権の設定登録がなされた後でないと、損害賠償請求はできない。
ただし、公開された発明については、警告の上補償金支払いを請求することは可能!

特許法第69条1項には「試験又は研究」のためにする実施には特許権の効力が及ばないことが規定されている。
「試験又は研究」の範囲は特許発明自体の「特許性調査」、「機能調査」及び「改良・発展を目的とする試験」に限られるというのが通説で、全ての試験または研究に特許権が及ばないわけではない。

特許発明が方法の発明である場合、その方法の実施にのみ用いられる物(専用品)の生産・譲渡・輸入などには、間接侵害として特許権の効力が及びます(特許法第101条第2号・第5号)。

プログラムに関する特許発明を電気通信回線を通じて提供する行為(例:インターネット経由での配信)も、特許権の効力が及ぶ侵害行為とみなされる

特許侵害の損害賠償額

主に特許法102条に基づき、逸失利益(1項)、侵害者の利益(2項)、実施料相当額(3項)の3つの算定方法があり、これらを組み合わせて請求されます。

特許法102条に基づく主な算定方法
・逸失利益(特許法102条1項)
侵害者が販売した数量 × 権利者が販売できた場合の単位あたりの利益。
権利者が実施能力を超えても、その分ライセンス料相当額を請求可能。
・侵害者の利益(特許法102条2項)
侵害者が侵害行為で得た利益の額が、権利者の損害額と推定される。
*侵害行為によって得た利益(寄与分)に限定され、侵害者は「寄与率」の立証で減額可能。
・実施料相当額(特許法102条3項)
実施許諾した場合に受け取るはずだったライセンス料(ロイヤルティ)相当額。
侵害行為があったことを前提としたライセンス料率や市場相場、当事者の状況などを考慮して算定される。

侵害調査

「特許侵害予防調査(FTO調査)」や「侵害回避調査」とも呼ばれます。
自社の製品やサービスが他社の特許権を侵害していないか、また他社が自社の特許権を侵害していないかを事前に確認する調査

リバースエンジニアリング(RE)

競合他社製品やマルウェアなどを解析し、知的財産権(特許、著作権、意匠権)侵害や不正な模倣、セキュリティ脆弱性を特定する活動を指し、製品の仕組み解明、不正行為の証拠収集、セキュリティ強化に役立ちます

国内優先権

日本で特許出願(基礎出願)した後1年以内に、その発明に改良や追加事項を加えて新たな特許出願(国内優先権主張出願)を行うと、先の出願日を基準として新規性・進歩性を判断してもらえる制度。

国内優先権主張を伴う場合:、審査請求期間の起算点は、国内優先権の主張を記載した後の出願日(後願の出願日)です。
そのため、この後願の出願日から3年以内となります(特許法第48条の3第1項)。

出願後の技術進歩や発明の包括的な保護、出願手続きの遅れをカバーする目的で利用され、先の出願の開示内容が優先権の範囲となりますが、出願日(原則)から1年3ヶ月で先の出願は取り下げ擬制されます。

後の出願は、基礎出願の出願日(優先日)を基準に審査されるため、その後の公開や公知によって不利な扱いを受けない(新規性・進歩性の判断基準日が変わる)。

優先日(先の出願日)から1年6ヶ月が経過した時点で出願公開されるのが原則

意匠登録出願を国内優先権の主張の基礎とすることはできない(第 41 条第 1 項)。

特許に関わる用語と注意

クロスライセンス

企業等が保有する特許権を相互にライセンスすること。

特許権の譲渡

製品化の有無に関わらず譲渡することができます。

先願主義

同一の発明について複数の出願があった場合には、、、
最も先に出願をした人が特許を受けることができる。

同日出願

同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、、、
特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができます。
協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、、、
いずれも、その発明について特許を受けることができない。

自然法則

発明におけるキーワードで、代表的な除外例として、「プログラミング言語」があります。

IPランドスケープ

IP(Intellectual Property:知的財産)とLandscape(風景、環境、見通し)を組み合わせた用語。
知的財産情報を分析、あるいはその結果を活用すること。
あるいは、それを主とした経営そのもの。
特許などの知的財産(IP)情報と市場・事業情報などを組み合わせて分析し、自社や競合他社の技術動向、市場の将来性を見通し(Landscape)、経営戦略や事業戦略の立案・意思決定に活用する手法です
研究開発部門や知的財産部門内で完結すべきものではなく,その結果を経営陣や事業責任者に提示すべきである。

特許マップ(パテントマップ)

膨大な特許情報を分析・整理し、グラフや図で視覚的に表現したもので、技術動向、競合の戦略、自社の研究開発方向性を把握するための強力なツールです。
技術開発や研究、経営の戦略立案の際に他社動向を把握するためのツールとして利用できる。

登録原簿

特許庁によって管理されており、誰でも閲覧・謄写を請求できます。
特許原簿の閲覧請求に関する詳細は、特許庁のウェブサイトでご確認できます。
なお、特許原簿には、通常実施権の「設定登録」がなされた情報のみが記載されます。
当事者間の契約のみで成立する「黙示の通常実施権」や「法定通常実施権」などは、原則として原簿に記載されないため、原簿調査だけで全てのライセンス状況を網羅的に把握することは困難です