実務

2026年1月19日

目次

気体を用いた検出器

放射線の測定にはα線、β線、 γ線、中性子線の種類や測定の目的・対象に応じて各種の原理や構造の機器が使用されます。

①測定原理
・アルゴンなどの気体分子が、放射線により電離されて生じる電子-イオン対で生じる電流から検出するガイガーカウンターなどの気体入り検出器
・半導体のp-n接合部(空乏層)内で放射線によりつくられる電子と正孔の対で生じる電流から検出する半導体検出器
・物質と放射線の相互作用により生じる発光(シンチレーション現象)を検出するシンチレーション検出器
・放射線により物質に化学反応が生じることを利用した化学検出器/X線写真
・その他、チェレンコフ光を用いた検出器

②測定目的・対象
・建物や管理区域などに設置するエリアモニタ
・実験施設内などで移動して測定するサーベイメータ
・作業者などの個人の被ばく量を測定する個人線量計
・その他研究用途などに使用する機器

気体の電離

気体の中に陰極と陽極を設けて高電圧を印加し(電圧を与え)、そこに放射線を照射すると、気体が電離し、電子-陽イオン対が生じます。
このイオン対の挙動は、印加電圧の大きさによって6種の領域に分かれます。
印加する電圧が高くなると、イオン対が増加します。
このときの印加電圧によってイオン対の動き方は再結合領域から連続放電領域までの6つの領域に分かれます。

再結合領域

印加電圧が低いと、電子などを電極に引き寄せる力より、電子とイオンがクーロンカで引き合う力が大きくなります。
この結果、時間が経つと両者が再結合して気体分子に戻ります。
この電圧範囲を再結合領域といいます。

電離箱領域

印加電圧が高くなると、電子-陽イオン対間の引力より、電極からの引力が大きくなるため、電子と陽イオンは陽極と陰極に向かってゆっくりと進み、電極に到達すると電流が流れます。
このとき、電子や陽イオンは、他の気体を二次的に電離させることなく電極に到達し、電流が流れます。
この電圧領域を電離箱領域といいます。
この領域では、イオン対は再結合せず、かつ二次的な電離が生じません。
このような状態を飽和、この電圧領域を飽和電流領域、電流を飽和電流と呼びます。

比例計数管領域

印加電圧がさらに高くなると、電子と陽イオンは印加電圧で加速され、高速になります。
これが他の気体分子と衝突して電離し、二次的な電子-陽イオン対を生じます。
このイオン対はさらに印加電圧で加速され、次の気体分子を電離します。
このように次々と電離が起こって電子と陽イオンが増える現象を気体(ガス)増幅といいます。
また、この電圧領域を比例計数管領域といいます。
比例計数管領域では、最終的に生じるイオン対の数は入射放射線のエネルギーに比例するので、これを計測すれば入射した放射線のエネルギーを測定できます。
また、イオン対数が増えるので、電流信号の大きさは電離箱領域より大きくなります。
なお、比例計数管領域で使用される検出器を比例計数管といいます。

制限比例領域

制限比例領域では、比例計数管領域と同様に気体増幅が起こりますが、生成するイオン対量は入カエネルギーと比例しなくなります。

GM計数管領域

印加電圧がさらに高くなると、発生した電子-陽イオン対は次々と気体増幅を起こします。
さらに、気体増幅で生じた電子が印加電圧で加速され、最初に生成したイオン対量の106~107倍に増加します。
この現象を電子なだれといいます。
この電圧領域をGM(ガイガーミュラー)計数管領域といいます。
検出信号は電離箱領域や比例領域より信号が大きいため、検出の電子回路が簡単で高感度な測定ができます。
しかし、生成イオン対の量が入射放射線のエネルギーによらず一定なので、放射線のエネルギー測定には使用できません。

連続放電領域

印加電圧がさらに高くなると、放射線が入射しなくても陰極から陽極へ電子が連続的に流れます。
これをコロナ放電、この電圧領域を連続放電領域といいます。

気体の電離を利用した検出器

電離箱式検出器

電離箱式検出器は電離箱領域を利用する検出器で、主に高精度の放射線エネルギー測定に使用されます。
構造は、アルゴンや窒素などの不活性ガスを満たした放射線用窓がついた容器に陰極と陽極を入れ、電極間に電離箱領域に対応する電圧を印加します。
β、γ 線の測定では、窓に導電塗料を塗ったフィルムや雲母を使用します。
α線の測定ではグリッド付電離箱が使用されます。
電離箱式検出器は構造が簡単ですが、機械的衝撃に弱く、温度や湿度の変化に強く影響を受けます。

比例計数管検出器

比例計数管検出器は比例計数管領域を利用する検出器で、高感度な放射線エネルギー測定に使用されます。
構造は多くの場合、金属製の円筒を陰極、その中央に陽極芯線と呼ばれる極細の芯線を陽極とし、その間に電圧を印加します。
円筒の一端は雲母などでできた放射線の入射窓が設けられます。
内部には気体が封入され、それに放射線が入射されて気体が電離し、放射線のエネルギーに比例した電流がパルス状に流れます。
その大きさを測定し、放射線のエネルギーを求めます。
電極内に封入する検出気体には、次のものがあります。
・α、β、γ線:アルゴン90%にメタン10%を加えたPRガスやメタンガス。
・中性子線:BF3、トリチウムガス。中性子との反応で生じる荷電粒子を測定。
円筒電極の代わりに金属性の球形または半球形の陰極と、その中央に置かれた陽極があり、陽極に測定試料を載せ、内部にPRガスを流しながら測定するガスフロー型装置もあります。
この装置では試料と電極間に窓材がないため、飛程の短いα線や3Hなどのエネルギーの低いβ線の測定に使用されます。
球形電極のものは全方向(4π方向)に放出された放射線を検出でき、放射能の絶対測定に使用します。
これを4π型と呼びます。
半球形電極のものは立体角で2π分が検出されるので、2π型と呼びます。

GM計数管式検出器

GM計数管式検出器は、GM計数管領域の電子なだれ現象を利用し、入射した放射線の数を測定する検出器です。
1個の放射線が入射するたびに同じ大きさの電子なだれが発生し、高さの同じ電気パルスが生じます。
その数から放射線数を求めます。
しかし、エネルギー値を求めることはできません。GM計数管式検出器の構造は円筒形の比例計数管とほぼ同様ですが、大きな印加電圧をかけて使用します。
検出気体にはアルゴンやヘリウムなどが使用されます。CM計数管式検出器の主な用途として、β線やγ線の放出核種による表面汚染測定があります。
しかし、飛程が短く、雲母などの入射窓を透過できないα線や、3Hのような低エネルギーβ線のみを放出する核種の検出は困難です。
GM計数管式検出器にも2π型や4π型のガスフロー型装置があり、検出気体としてヘリウム98%とイソブタン2%の混合ガス(Qガス)が使用されます。
電子なだれで生じた陽イオンは、電子と比べて移動速度が遅いため、陽極芯線近くに留まってその周りを取り巻きます。
この取り巻いた陽イオンを鞘と呼び、これにより見かけ上の印加電圧が弱まり、電子なだれが停止します。
その後、陽イオンは移動を続け、陰極へ到達すると鞘が消滅し、再び放電が起こります。
この再放電を防ぐには、次の2つの方法があります。
・内部消滅法:検出気体に消滅ガスと呼ばれる臭素などのハロゲンやアルコールなどの有機気体を少量混ぜ、それが電離することで、陽イオンを消滅させる。
・外部消滅法:電気回路で一時的に放電が起こらなくなるまで印加電圧を下げる。

GM計数管の不感時間と数え落とし

GM計数管の出力は、最初は急激に大きくなり、その後100~200μ秒程度の持続時間で減衰します。
この間に、次の放射線が入射しても信号は生じません。
これを不感時間と呼びます。
この後に次の放射線が入射したとき、信号の大きさは徐々に大きくなり、はじめと同じ高さになります。
この時間を回復時間といいます。
GM計数管式検出器では、信号の高さが弁別レベルとなったときに放射線が入射したと判断します。
再び、放電が起こるまでにかかる時間を分解時間といい、それまでの間に入射した放射線は計測されません。
これを数え落としといいます。
測定時間tの間の計数をn、分解時間をTとすると、計数nを得るのに実際に
要した測定時間はt-n・τとなります。
この時間でnを割ったn/(t-n・τ)
が数え落としを補正した真の計数率になります。
さらに、計数率が極めて高く、パルス高が回復できない状態を窒息と呼びます。

半導体検出器

固体素子の特徴

固体素子を用いた検出器は、気体の電離を利用した検出器と比べて10倍以上の高い感度が得られます。
加えて、装置を小型化できること、電気回路との一体製造が容易なことなどから、広く利用されてきました。
現在、実用化されている固体素子には、半導体検出器、シンチレーション検出器、ルミネセンス線量計などがあります。

半導体検出素子の原理

シリコンやゲルマニウムの単結晶に、少量のリンやヒ素などの5価元素またはリチウムを入れたn型半導体と、少量のホウ素、ガリウム、アルミを入れたp型半導体を接合すると、pn半導体ダイオードが構成されます。
n側に陽極、p側に陰極をつないで逆方向に電位をかけると、p側の正孔とn側の電子が結合するため、両者の境界に電荷の移動を担うキャリヤとなる電子も正孔も存在しない、空乏層と呼ばれる電気の絶縁層が生じます。
・放射線の検出:空乏層に放射線が入射すると、その中に電子と正孔の対が生じ、それらがそれぞれp、n電極に到達してパルス電流が流れます。
この電流の信号により放射線を検出します。
・エネルギーの測定:生成する電子―正孔対の数は放射線のエネルギーをε値で割った値で、パルスの大きさからエネルギーが求められます。
・エネルギースペクトル:多数の放射線から同じ大きさのパルスごとの数を求め、横軸にパルスの大きさ、縦軸にパルスの数をプロットすると放射線のエネルギースペクトルが得られます。

ゲルマニウム検出器

高純度ゲルマニウムにホウ素イオンを入れたp型半導体と、リチウムを拡散させたn型半導体を組み合わせた半導体で、γ線やX線の検出器に使用します。
室温では熱による半導体内部からの雑音が多いため、測定時に液体窒素などによる冷却が必要です。
ゲルマニウムのε値はシリコンの値(3.0eVと3.6eV)やアルゴンのW値(34eV)と比べて小さいので、エネルギー分解能が優れています。
通常の検出器は、放射線の入射窓にある素子保護層でγ線が吸収されるため、測定できるエネルギー下限は50keV程度です。
保護層としてゲルマニウム表面に0.3μmのホウ素の膜をつけた検出器では、数keVからのエネルギー測定が可能です。

シリコン検出器

シリコン検出器には、次の2種類があります。
・シリコン結晶内にリチウムを拡散させたシリコン(リチウム)ドリフトSi(Li)検出器
・シリコン結晶表面に薄い不感層を設けたSi表面障壁型検出器
低エネルギーγ線やX線用検出器で数keV~20keVの範囲でほぼ100%の検出効率があり、低エネルギーのγ線や特性X線を放出する核種の同定に使用されます。
常温では熱により電子-正孔対が生成し、これがノイズの原因となるため、使用は液体窒素に入れるかペルチェ冷凍機で冷却しながら行います。
また、昔の検出器は、室温の状態ではLiが拡散し、性能が劣化するため、常時液体窒素に浸けていましたが、最近のものでは室温保存が可能となっています。

Si表面障壁型検出器

シリコンのn型半導体の表面を酸化してp型領域とし、その上に金などの薄膜をつけて電極兼放射線入射窓とした検出器です。飛程の短いα線、重荷電粒子や低エネルギーβ線などの検出、エネルギースペクトル測定や核種同定に使用されます。
測定は真空容器に試料とともに入れ、真空下で測定することで、空気によるエネルギー減衰を防ぎます。
なお、検出器の冷却は不要で、測定は室温で行います。

シンチレーション検出器

シンチレーション検出器は、放射線で物質が励起し、それが放出する光を測定して、放射線の数やエネルギーを求めるものです。
検出法には、無機結晶を使う無機シンチレーション検出器、有機物質を使う有機シンテレーション検出器と有機物を液体に溶かして使う液体シンチレーション法があります。
ある種の物質に放射線を照射すると、物質内の電子が励起され、それが基底状態に戻るときにそのエネルギーが光(蛍光)として放出されます。
これをシンチレーション光といい、この現象を起こす物質をシンチレータといいます。
これには無機シンチレータと有機シンチレータがあります。
シンチレーション検出器は、このシンチレーション光を光電子増倍管で増幅し、大きな電流パルス信号に変換して放射線を検出します。
このパルス信号の大きさが入射放射線のエネルギーに比例することを利用し、これを求めます。
しかし、光電子増倍管の増倍率は管ヘの印加高電圧によって変わるので、電圧の安定化が重要です。

無機シンチレーション検出器

無機シンチレータの多くは、ハロゲン化合物で、NaI(Tl)、BGO、CsI(Tl)、BaF2、6LiI(Eu)、またZnS(Ag)などがあります。
平均原子番号が大きいほどγ線に対する感度が高いので、 γ線用にはそのような物質が使用されます。

一般に有機シンチレータと比べ、発光効率が高いという利点があります。一方、
潮解性があったり、衝撃に弱かったりなど、取り扱いにくい面もあります。

NaI(Tl)シンチレーション検出器

蛍光の寿命が短いタリウムを0.1%程度含有させて活性化したヨウ化ナトリウム結晶[NaI(Tl)]で、 γ線やX線の検出に利用されます。

CSI(Tl)シンチレーション検出器

NaI(Tl)と比べて潮解性が小さいため、取り扱いが容易です。
ただし、感度が半分程度なので、光電子増倍管の代わりにフォトダイオードで光を検出する、小型で安価なγ線やX線の検出装置として使用されています。

ZnS(Ag)シンチレーション検出器

ZnS(Ag)は発光効率の高いシンチレータですが、結晶化が難しく、白い微粉末しか得られず、効率よく外部に光を取り出すことが困難です。
これを透明基板上に薄く塗布したものが、高エネルギーα線の検出に使用されます。

6Li:(Eu)シンチレーション検出器

6Li(n,α)3Hの核反応を利用して中性子検出器として使用されます。

有機シンチレーション検出器

有機シンチレータは、主にベンゼン環を含む芳香族炭化水素化合物です。
また、これらをスチレンなどに混ぜたプラスチックシンチレータや、液体に溶かした液体シンチレータがあります。
特徴は次のとおりです。
・発光減衰時間が数ナノ秒と無機物質より2桁短く、高放射線量率測定に向く。
・実効原子番号が低いため、α線やβ線の測定に適する。
・中性子阻止能の高い水素を多く含むため、高速中性子の測定が可能。
課題としては、次のことが挙げられます。
・α線などの高LET放射線では有機物質が損傷するため、発光効率が低い。
・γ線やX線に対しては吸収係数が小さく、光電効果の割合が低い。
用途として、スチレンなどにアセトラセン、スチルベンを加えたもので、厚さ1mm程度の検出器がβ線測定用に多用されています。

液体シンチレーション法

液体シンチレーション法は、ジフェエルオキサゾール(PPO)などの有機シンチレータをトルエンやキシレンに溶解した液体(液体シンチレータ)をバイアルに入れ、それに試料を溶解して光電子増倍管(PMT)でシンレーション光を増幅し、電気パルスとして測定します。特徴は次のとおりです。
・シンチレータに溶かして測定するため、試料から全方向に放出される放射線を効率よく検出できる。
・試料とシンチレータ間の空気層や検出器窓による放射線吸収、また試料自身による自己吸収が生じない。
・シンチレータの発光効率が高い。
・発光減衰時間が数十ナノ秒と短く、高濃度の放射性試料の測定が可能。
これらの特徴から広いエネルギー範囲のα、β、γ線の高感度測定が可能です。
特に飛程が短いα線や低エネルギーのβ線を放出する3Hや14Cに有効です。
課題としては、次のことなどが挙げられます。
・不溶性物質を測定できない。
・クロロホルムなど共存する物質により発光が抑えられる化学クエンチング。
・試料溶液が赤や黄色に着色することで光が吸収される色クエンチング。
・試料溶液とシンチレータの反応で生じるケミルミネセンスによる過大評価。
・高感度なため、ガラスバイアルに含まれる40Kの放射線によるノイズの発生。

液体シンチレーションの要点

溶媒にシンチレータと助剤を溶かしたシンチレーションカクテルをバイアルに入れ、そこに一定量の試料を溶かして測定します。
シンチレータ物質には、次のようなものがあります。
・ジフェニルオキサゾール(PPO)
・2-(4‐tert‐ブチルフェニル)‐5‐(ビフェニル)_1,3,4‐オキサジアゾール(butyl-BPD)
溶媒としては、次のものを使います。
・有機物質用:トルエン、キシレン
・水溶液用:水とエマルジョンをつくる乳化シンチレータ、ジオキサン
バイアル(測定容器)素材は、次のものを使います。
・プラスチツクバイアル
・ガラス(カリウムが少なく、40Kによるバックグラウンドが小さいもの)
溶液に着色がある場合や透明度が低い場合は、次のようにします。
・活性炭による着色成分の除去。鉄分が原因の場合は沈殿除去 ・ろ過
・クロロホルムの混入は、発光効率を低下させる(化学クエンチング)
なお、32Pの放射能測定では、シンチレータの代わりにチェレンコフ光で計測できます。

中性子検出器

中性子は電離を起こさないため、検出には核反応や軽い原子核との衝突で生じた荷電粒子を検出することで間接的に行います。
また、中性子の運動エネルギーは熱中性子の約25MeVから、核分裂で生じる中性子や加速器で発生させる中性子の数keVから数10MeVと9桁以上にわたるため、この範囲をカバーする測定装置が必要です。

BF3比例計数管

低速の中性子の検出には、主に(n, α)反応や(n,p)反応などが使用されます。
このときに、発生する荷電粒子が運動エネルギーを得るためには、反応のQ値が正、すなわち発熱反応であることが必要です。
最もよく使用される反応は、反応断面積が大きい10B(n, α)7Liです。
熱中性子との反応では、生成する7Liの約93%が0.48MeVの励起状態になり、その後γ線を放出します。
残りの約7%は直接基底状態になります。
10B+n→7Li(0.84MeV)+α(1.47MeV)+γ(0.48MeV)[93%]
→7Li(1.01MeV)+α(1.78MeV)[7%]
この反応のQ値は2.79MeVです。
BF3比例計数管では、比例計数管のPRガスの代わりに、BF3(三フッ化ホウ素)ガスを使用します。
この場合、天然ホウ素10Bの存在比は約20%なので、これを濃縮して感度の向上を図ります。
比例計数管内で中性子と計数ガス中の10Bが反応すると、7Liとα粒子に2.79MeV(直接基底状態になる場合)、もしくは2.31 MeV(励起状態になる場合)のエネルギーが与えられます。
計数管への印加電圧をプラトー領域に設定すれば、これらの反応をほぼ100%の効率で計数できます。

課題としては、次のことが挙げられます。
・中性子反応が計数管壁近くで起こると、生成した7Liやα粒子が壁と衝突してエネルギーが失われるため、パルス波高が減少する(壁効果)。
・10B(n, α)7Li反応の断面積は、中性子の速度をvとすると、1/vに比するため、運動エネルギーが小さい熱中性子では高感度測定ができるが、高速中性子では感度が低下する。
・BF3は放射線の照射で分解しやすく、高線量中性子源の測定には不向き。
・BF3は有毒なため、取り扱いに注意が必要。

3He比例計数管

3Heは、気体の中で最も大きい5300バーンの中性子断面積を持ちます。
これを検出気体として用いるのが3He比例計数管で、次の核反応を利用します。
3He+n→p(0.573MeV)+3H(0.191MeV)
この反応のQ値は0.765MeVです。
3Heは、放射線による分解がないので、熱中性子の検出以外に、高速中性子の測定やスペクトロメータ用検出器としても使用されます。
なお、このとき検出されるパルス波高は、中性子のエネルギーにQ値を加えたものとなります。
課題としては、次のことが挙げられます。
・この検出器はγ線も検出するため、原子炉の計装用途ではγ線と中性子線の弁別性能が低いという欠点がある。
・反応のQ値は比較的小さいが、生成する陽子と3Hが軽いため、1気圧の3Heガス中の飛程がそれぞれ6cm、2cm程度になり、BF3と比べて大きな壁効果が生じる。
このため、3Heの加圧、ストッピングガスと呼ばれるXeやCF4などの阻止能の大きいガスを加えて飛程を短くし、壁効果を抑えて使用する。

6LiI(Eu)シンチレーション検出器

6LiI(Eu)は、NaI結晶と類似した吸湿性の結晶です。
6Lil(Eu)シンチレーション検出器は、この結晶内で起こる6Li(n, α)3H反応で生じた陽子と、α粒子が発する光を利用した検出器です。
この検出器は小型化できるので、個人用中性子検出器として使用されています。

反跳陽子比例計数管と反跳陽子シンチレータ

反跳陽子計測は、中性子と水素核との衝突で生じる反跳陽子の検出を介して中性子を測定する方法で、エネルギーの高い高速中性子の計測に使用します。
これには、次のものがあります。
・検出気体にメタンガスや水素ガスを使用する反跳陽子比例計数管
・水素原子を多く含む液体を用いる反跳陽子液体シンチレーション検出器や、プラスチックを用いる反跳陽子プラスチックシンチレーション検出器。
この方法で、反跳核の質量数をA、入射中性子のエネルギーをEn、反跳粒子のエネルギーをERヽ散乱角度をθとすると、EnとERの間には、次の関係が成立します。
ER=4A/{(1+A)2}・(cos2 θ)En
ここで、陽子の場合はA=1であるので、ERはθによって0~Enの範囲で変化します。
したがって、入射中性子のエネルギーEnが線スペクトルでも、反跳陽子のエネルギー分布は0からEnまでの連続分布となるので、エネルギー解析は複雑となります。

中性子放射化

中性子放射化は、中性子放射化分析と同様、中性子が照射された核から、その後に放出されるγ線の強度を、γ線検出器で検出する方法です。
これに用いる核種の条件は、
①中性子捕獲反応の断面積が大きいこと
②生成核の半減期が数時間から数日と扱いやすいオーダーであること
③放出されるγ線のエネルギーがGe検出器やNaI(Tl)検出器で検出しやすいこと
などから115In、165Dy、197Auが使用されています。
中性子との反応に、しきいエネルギーがある27Al(n, α)24Naや、32S(n,p)、32Pなども用いると、このエネルギー以下の熱中性子を除いた中・高速中性子線のみの計測が可能です

レムカウンタとロングカウンタ

BF3や3He比例計数管は、熱中性子に対して高い感度があります。
この周りを、水素を多く含むポリエチレンやパラフィンなどを厚さ10cm以上巻いた検出器は、高速中性子を効率的に減速させて測定します。
これをレムカウンタといいます。
この測定器のエネルギー特性は、減速材の厚さや形状、種類により調節できます。
これを利用し、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告74の線量換算係数をもとに、1cm線量当量換算係数曲線に適合するように測定器のエネルギー特性を調整することで、中性子のエネルギー情報なしに、熱中性子からMeVオーダーまでの広い範囲にわたってlcm線量当量を直読できます。
しかし、数eVから数keVの中性子の1cm線量当量を過大評価することが知られています。
なお、日本では内部に入れる検出器としては、3He比例計数管が主流です。
一方、エネルギー特性をほぼ平坦にした装置をロングカウンタと呼びます。
その他、厚さの異なるいくつかの検出器の応答の差から、中性子エネルギー分布の情報を得る手法も用いられています。
緊急時環境放射線モニタリング指針では、このレムカゥンタの指示値を暫定的に中性子線による実効線量とみなすことになっています。

中性子用固体飛跡検出器

プラスチックなどに重荷電粒子が入射すると、その経路に沿って損傷(潜在飛跡)が生じます。
これをエッチングで飛跡を拡大し、顕微鏡などで観測する検出器を固体飛跡検出器といいます。
プラスチックには主にアリルジグリコールカーボネート(ADC)が使われ、中性子検出にはホウ素10B(n,a)7Li反応で生じたα粒子により、検出器に生じる傷を検出する方法がとられています。
速中性子の個人被ばくをモニタする線量計として使用されています。

β-γ同時測定法

β-γ同時測定法は、標準線源が不要な放射能の絶対測定法です。
核反応分岐比などの崩壊形式のパラメータや、検出器の検出効率も不要なため、放射能標準の主要な測定法として使われています。
同時測定では60Co、134Csゃ154Euなどのβ線とγ線を放出する核種、あるいは32Pや35Sなどのβ線のみを放出する核種に適用されます。
β線検出器とγ線検出器を対向させ、その間に放射能s Bqの点状線源を置いてβ線、γ線およびβ線とγ線が同時に計測された、同時計測数ncを測定します。
このとき、β線検出器およびγ線検出器の計数効率をそれぞれεβ、 εγとすると、β線およびν線の計測数nβ、nγはそれぞれ次式で与えられます。
nβ=s・εβ
nγ=s・εγ
一方、β線とγ線の同時計測数ncは、β、γの検出効率の積で与えられるので、
nc=s・εβ・εγ
となります。
これらより、sは次のようになります。
s=nβ・nγ/nc
つまり、 εβやεγなど装置に依存する定数が不明でも、放射能sを正確に求めることが可能になります。

α線検出器

α線検出器には、比例計数管、シンチレーション検出器、半導体検出器があります。
・比例計数管:β線測定と兼用でき、入射窓面積が大きいものが使用されます。
検出気体にはPRガスが使われます。
また、ガスフロー型の比例計数管も使われます。
・シンチレーション検出器:光透過性のある基板上に粉末状のZnS(Ag)シンチレータを塗布した素子と、光電子増倍管を組み合わせた構成となっています。
・Si表面障壁型検出器:シリコンのn型半導体の表面を酸化してp型領域とし、その上に薄い金やアルミニウム膜をつけて電極を兼ねた入射窓とします。
表面近くに空乏領域ができ、飛程の短いα線や重粒子線の測定に使用されます。

個人用線量計

個人の外部被ばく線量のモニタリングでは、人体に装着して一定期間の被ばく線量を評価するため、小型で1~3か月間に受ける累積線量を測定できる積算型線量計が用いられます。
個人用線量計には、次のものが挙げられます。

蛍光ガラス線量計(RPLD)

蛍光ガラス線量計(RPLD)は、少量の銀を入れたリン酸塩ガラスに放射線を照射すると生じる蛍光中心と呼ぶ欠陥に、紫外線レーザーをパルス照射すると蛍光を発生するラジオフオトルミネセンス現象を利用します。
小型なので、手足などの局部被ばくにも使用できます。
このうち、手指に用いるものをリングバツジといいます。
蛍光中心は、熱アニーリングという熱を加える操作で消滅するので、この線量計を再利用できます。

光刺激ルミネセンス線量計(OSL)

光刺激ルミネセンス線量計(OSL)は、微量の炭素を添加した酸化アルミニウムに放射線を照射すると生じる結晶内部の欠陥に、蛍光より波長の長い緑色レーザー光を照射すると蛍光を発する輝尽性発光の光刺激ルミネセンス現象を利用します。
結晶の欠陥は、強い光を長時間照射すると消滅するので、線量計を再利用できます。

熱ルミネセンス線量計(TLD)

熱ルミネセンス線量計(TLD)は、フッ化リチウム(LiF)結晶に放射線が照射されると生じる結晶内部の欠陥が、加熱により光を発して消滅する熱ルミネセンス現象を利用した線量計です。
また、加熱温度と発光強度の関係をグロー曲線と呼びます。
データを読み出すと欠陥が消滅するので、線量計を再利用できます。

フィルムバッジ(FB)

フィルムバッジ(FB)は、フィルムに塗られた臭化銀に放射線が当たると分解して黒くなる感光作用を利用し、フィルムの黒化度合から放射線量を測定します。

固体飛跡検出器

固体飛跡検出器は、α線、陽子や中性子などの高エネルギー粒子がプラスチックなどの絶縁性固体を通過したとき生じる放射線損傷を、薬品でエッチングして可視化させ、その飛跡の数を光学顕微鏡で観察して放射線量を測定する検出器です。
この検出器はX線やγ線に反応しないこと、小型で安価であることなどの特徴があり、高速中性子線や重粒子による被ばく量の測定に使用されています。
検出素子としては、アリルジグリコールカーボネート(ADC、CR39)が使われます。

電子式ポケット線量計

電子式ポケット線量計は、小型化したGM計数管やSi半導体検出器のパルス出力数を積算し、被ばく線量や線量率を直読できる線量計です。
デジタル表示機能で作業中に1cm線量当量に対応した被ばく線量を読み取ることや、積算被ばく量が一定の値に達したら警告を発するアラーム機能を付与できます。
事故の緊急作業中に被ばく限度を超すと予想される場合などに使用します。

イメージングプレート(IP)

イメージングブレート(lP)は、光刺激ルミネセンスと同じ輝尽性蛍光体を用いたX線やγ線の二次元検出器です。
構造はBaFBr(Eu2+)の微結晶をフィルムに塗布したものです。
X線を照射したIPにHe-Neレーザー光を照射するとX線の露光量に応じた発光があるので、この発光量を計測することでX線照射量に比例した二次元画像が得られます。
特徴と課題
・4~5桁にわたるX線強度範囲を測定できる。
・画像をデジタルデータとして処理可能で、現像などの化学的処理が不要。
・イメージングプレートは再使用が可能。
・X線、 γ線以外の放射線に使用できない。
・フェーディング(退行:時間とともに減衰し、測定効果が小さくなる現象)が大きいため、測定後すぐにデータの読み出しが必要。

サーベイメータ

作業環境モニタリングは放射線業務に従事する者(放射線作業者)が、放射線による障害の発生を防止するために作業環境の外部線量率を測定することです。
これには、
・固定して使用するエリアモニタによる連続的な測定
・可動式のサーベイメータ(β、 γ、中性子など)による定期的な測定
という2つの方法があります。

使用検出器としては、主に空気電離箱、GM計数管およびNaI(Tl)シンチレーションが使われますが、比例計数管やシリコン半導体検出器も使われます。

サーベイメータは、可搬型の放射線測定器のことを総括的にいいます。
多くの場合、1cm線量当量率(μ Sv/h)で目盛がつけられていますが、空気吸収線量率(μ Gy/h)で日盛られたものもあります。
また、スイッチ切り換えによりこれらの積算値を知ることができるようにしたものもあります。

電離箱式サーベイメータ

電離箱式サーベイメータはγ(X)線やβ線の線量(率)の測定に使用されます。
入射γ線の広い範囲のエネルギーに対して感度が一定で、線量率依存性も小さい測定装置です。
この検出値に換算係数を掛けて1cm線量当量(率)を直読する装置もあります。
円筒形の陰電極の前方に入射窓が設けられていますが、陰極にγ線吸収が少ないプラスチックの表面を炭素膜で電導性を持たせる構造で、側面方向の入射にも同一に近い感度を有しています。
課題として、微弱信号を取り扱うため、湿度や外部ノイズの影響を受けやすいことがあります。

GM管式サーベイメータ

GM管式サーベイメータは、感度が高く、γ(X)線やβ線を放出する核種を取り扱う施設の作業モニタリング、周辺環境モニタリングに広く使用されます。
また、汚染場所や表面汚染の調査にも広く使われます。
ただし、汚染箇所はわかりますが、何の核種かはわからないので、別途調査が必要です。
さらに、分解時間が長いため、放射線量率が高い場所の測定は困難です。

γ線用シンチレーション式サーベイメータ

γ(X)線用シンチレーション式サーベイメータには、NaI(TI)やCsI(Tl)などがありますが、主にNaI(Tl)が使われます。
電離箱式と比べて高感度なので、~数十μ Sv/h程度の放射線まで測定できます。
また、不感時間が短いので、高線量率試料の測定に適しています。
さらに、エネルギーの情報から核種の推定が可能です。

中性子線用サーベイメータ

中性子線用サーベイメータは、加速器施設や原子炉施設などの管理、また最近では放射性物質を用いたテロ対策のための不審物検査などに使用されています。
検出器は、主に熱中性子線用には3Heガスを入れた比例計数管サーベイメータが使われます。
また、3Heガスの入手が困難なこと、さらに不審物検査用に小型軽量化が必要との要望から6Lil(Eu)系シンチレータを用いた装置も開発されています。

α線、β線用サーベイメー夕

α線やβ線は飛程が短いので、その汚染源探査や表面汚染用サーベイメータには、入射窓の厚さが薄いことが重要です。
このため、端窓型GM計数管を用いたサーベイメータが使用されます。
α線用にはZnS(Ag)シンチレータを用いたものが使われ、β線用にはプラスチックシンチレータを用いたものが使われています。
3Hや14Cのように低エネルギーのβ線放出核では、薄窓を持つガスフロー式計数管を用いたサーベイメータが使用されます。

トレーサビリティ

エリアモニタおよびサーベイメータは、被ばくの形式や評価対象に対応した適切な測定器で国家標準(標準線源と校正)とのトレーサビリテイが保たれた測定器を使用します。

放射線スペクトロメトリ

スペクトロメトリとは、α線、β線、γ線や中性子線などのエネルギー値と放射能を測定し、その関係からスペクトルを求め、放射性物質の核種や放射能を求めることです。
これを測定する装置をスペクトロメータといいます。

スペクトロメータは、検出器、増幅器、マルチチャンネル分析器などで構成されます。
・検出器
α線、β線、γ線や中性子線が持つエネルギーから、その大きさに比例した大きさの電気パルス信号を発生します。
・マルチチャンネル分析器(MCA、多重波高分析器)
検出器からのパルス信号を、数百から8192段階の大きさごと(チャンネル)に弁別し、その大きさごとのパルス入力数(頻度)を求めます。
・横軸にチャンネル(エネルギーに対応)、縦軸に計測数(放射線量に対応)をプロットすると、エネルギースペクトル(波高分布)が得られます。
・横軸のビーク位置から核種を、ピークの面積から核種の量を求めます。

α線スペクトロメトリ

核から放出されるα線のエネルギーは3~8MeVの線スペクトルとなりますが、線源と検出器間にある空気層、検出器窓や検出器の不感層などによリエネルギー損失が生じ、スペクトルのピークは低エネルギー側にシフトし、幅も広がります。
このため、測定には次の注意が必要です。
・α線の自己吸収を抑えるため、試料を極めて薄くする。厚さがα線の飛程以上になると、スペクトルは台形状にひずむ。
・試料一検出器間の空気層による吸収をなくすため、真空容器に入れて測定。
検出器には、入射窓や電極によるα線エネルギー吸収層が少なく、半値幅が20keV以下と分解能が優れる表面障壁型シリコン半導体検出器が使用されます

β線スペクトロメトリ

β線の最大エネルギーは核によって10kevから5MeVにわたります。
連続スペクトルなので、その最大エネルギーから核種の同定や定量を行うことが困難です。
一方、内部転換やオージ正電子は線スペクトルなので、同定や定量は容易です。
β線などの電子は散乱を受けやすいので、測定には次の注意が必要です。
・測定試料を数μg・cm-2に薄くし、自己吸収を抑える。
・試料支持には原子番号が小さいものを用い、厚さ数10μg・cm-2に薄くする。
検出素子には、次に示す原子番号が小さいものを使用します。
・有機シンチレータ(液体、プラスチック)
・Si(Ll)検出器(シリコン(リチウム)ドリフト型シリコン半導体検出器)
・3Hや14Cなどの低エネルギーβ線を放出する核種は液体シンチレーションカウンタ

エネルギーの校正には、137Csが内部転換で放出する662keVの線スペクトルの電子を用います。
他の測定法としてフェザー法があります。
これは、試料と端窓型GM計数器などの検出器との間に、厚さの異なるアルミ板を置き、β線を測定して吸収曲線を作成し、それより最大飛程を求めて核種を推定する方法です。
β線の最大エネルギーをE[MeV]、アルミ中のβ線の最大飛程をR[g・cm-2]
とすると、両者の関係は次式で与えられます。
R=0.542E-0.133 (E>0.8MeV)
R=0.407E1.38 (0.8>E>0.15MeV)

γ線スペクトロメトリ

多くの核種は、固有のエネルギーを持つ線スペクトルのγ線を放出するので、エネルギー分解能が高い検出器で測定することで容易に核種を同定できます。

さらに、γ線は透過力が高く、自己吸収が少なく、試料の化学分離などの前処理が不要などの利点から、広範囲の分野で使用されています。

検出器に求められる要件

放射性核種が放出する主なν線のエネルギー範囲は5keVから4MeV程度です。
γ線は検出素子中で光電効果、コンプトン散乱、電子対生成の3種の作用によリエネルギーを失います。
測定は、光電効果でγ線のエネルギーを検出素子内ですべて与えることで生じる全吸収ビーク(光電ピークともいう)を用いて、ピーク位置のエネルギーから核種の同定、ピークの面積から核種の定量を行います。
光電効果は原子番号の3~5乗に比例するので、検出器は原子番号が大きいものが適しており、シンチレーション検出器のヨウ化ナトリウムNaI(Tl)、ヨウ化セシウム(CsI)ゃゲルマニウム(Ge)半導体検出器などが用いられます。

検出器の種類と特徴

NaI(Tl)検出器は直径、厚みが数cmから数10cmのものがあり、高感度です。
一方、分解能(半値幅)は約60keVとGe半導体検出器に比べ、劣っています。
Ge半導体検出器の感度はNaI(Tl)検出器より劣りますが、分解能が非常に高く、60Coの1.33MeVピークの半値幅は2keV以下です。
50keV以下のX線領域の高分解能測定には、リチウムドリフト型シリコン(Si(Li))半導体検出器が用いられます。
通常測定は試料を検出器の素子上に置いて行いますが、NaI(Tl)シンチレーション検出器には、NaI結晶の内部につくられた井戸状の穴の中に試料を入れ、試料からの放射能がすべて検出素子に入射するようにして検出感度を高くした井戸(ウエル)型検出器もあります。
Ge半導体検出器のエネルギー分解能は、全吸収ピークの半値幅で与えられます。
全吸収ピークの形がガウス分布とすると、半値幅は、標準偏差の2√2ln(2)倍となります。
分解能[eV]が電荷キャリヤ数の統計的変動のみに起因すると仮定し、γ線のエネルギー[eV]をE、グルマニウムのε値をε[eV]、ファノ因子をFとすると、分解能は2√2ln(2)) × √(F・ε・E)となります。

ピークの種類

γ線のバックグラウンドスペクトルには、次のようなピークが存在します。
・左側から右側になだらかに下がるコンプトン散乱と二次宇宙線による連続信号
・γ線の全エネルギーが検出部で吸収される鋭い全吸収ピーク
・複数のγ線が同時に検出器に入射した結果、各エネルギーの和の位置に現れる鋭いサムピーク
・γ線の全エネルギーが吸収される前に検出器から出てしまうことで生じる工スケープピーク
・1本の消滅γ線による511keVのビークと2本の消滅放射線が同時に吸収される1022keVのサムピーク。
1022keVのサムピークと他のγ線とによる3重サムピーク(ただし、2本の消滅放射線は互いに反対方向に放出されるので、消滅γ線によるサムピークは井戸型検出器以外では生じない)
・鉛の特性X線ピークや40Kなど、遮へい材料に含まれる核種

全吸収ビークのチャンネル位置はγ線エネルギーに対応し、面積は放射能量に比例します。
また、それぞれの換算定数はエネルギー校正定数、検出効率校正定数と呼ばれます。
前者は波高分析器のチャンネル番号の2次式関数で、後者はγ線エネルギーの高次方程式で与えられ、あらかじめ標準線源を用いて校正します。

中性子スペクトロメトリ

中性子は直接電離能力がないので、このスペクトロメトリは物質中での陽子との衝突、核反応により二次的に生じる荷電粒子のエネルギーを測定します。
検出器には次のものを使用します。
・3He中性子計数管
・高速中性子の反跳現象を利用した反跳陽子比例計数管

低レベル放射能の測定

低レベル放射能の測定における留意点

放射線計測では、低レベル放射能の測定が必要な場合があります。
特に環境測定や事業所の境界などの外部放射線量測定では、極めて低レベルの放射線の測定が求められます。
このような測定では、次のような処置がとられます。
・高検出効率の確保 ・長時間測定
・測定試料量の増加 ・バックグラウンド計数率の低減

高検出効率の確保

高検出効率を確保するためには、次のような処置が必要です。
・測定試料を検出器に近づける。
・大きな検出器を用いて幾何効率(放射線が検出器に入る割合)を大きくする。
・エネルギー分解能が高い検出器を使用する

長時間測定

測定信号強度Sは、測定時間Tに比例して増加します。
一方、バックグラウンドノイズ信号強度は、測定時間の√(T)に比例して増加します。
この結果、長時間測定で“信号/ノイズ" ∝ √(T)となり、ノイズの少ないデータが得られます。

測定試料量の増加

測定信号強度は試料量に比例しますが、バックグラウンドノイズ信号は変化しないので、試料量を多くするとバックグラウンドの少ないデータが得られます。

バックグラウンド計数率の低減

測定のバックグラウンド信号としては、次のものがあります。
・装置や検出器などからランダムに生じるノイズ、他の機器からの高周波信号や電源スイッチ開閉時の電磁的ノイズ
・試料以外に含まれる放射性物質や宇宙線からのバックグラウンド信号

試料以外からの放射線

試料以外からの放射線源には、次のようなものがあります。
・建材、土壌、空気など、周囲の環境中に存在する放射性物質
・検出器自体や遮へい材などに含まれる放射性物質
・μ粒子などの宇宙線

環境中に存在するγ線を放出する放射線核種

環境中の放射性核種でν線を放出するものには、次のものがあります。
・トリウム系列の208Tl:12.6MeV付近にピーク
・系列をつくらなぃ40K:1.46MeVにピーク
・原発事故由来の134Cs:605keVと796keVにピーク
・222Rnの子孫214Bi:609keV(134Csのピークに近いので測定の妨害となる)
これら検出器外部からの放射線による測定妨害を低減するには、鉛や鉄などで検出器を取り囲んで遮へいします。

バックグラウンドの低減

バックグラウンドの低減には、空間線量率を低く保つことが有効です。
換気による室内空気の交換は、天然放射性核種226Raの子孫核種に起因するバックグラウンドを低く保つのに効果があります。

検出器や遮へい材に含まれるγ線を放出する物質

検出器や遮へい材に含まれるγ線を放出する物質には、次のものがあります。
・210Pb:遮へい材料の鉛に含まれる、娘核種の210Biからの1.16MeV β線に起因する制動放射線
・一部のガラスに含まれる、40Kからの1.46MeVのピーク

逆同時計数

μ粒子は、透過力が強く、遮へいできません。
このため、計数管の周囲や上部に別の計数管(ガード計数管)を配置し、両方同時に計測した信号はμ粒子由来であるとして、それを除く逆同時計数を行います。
この方法は14C標識薬物投与実験などの極低レベルβ線測定などに使用されています。

ブラッグ・グレイの空洞原理

ブラッグ・グレイの空洞原理(Bragg-Gray cavity theory)

放射線が物質に吸収された量を、その物質中に設けた小さな気体(空気など)の「空洞」で生じる電離(イオン対生成)の量から測定するための理論です。
特に、物質中のγ線やX線の吸収線量を、電離箱を用いて実用的に測定する際に基盤となる原理で、測定対象物質の壁と空洞内の気体とのエネルギー吸収特性の差を利用し、複雑な計算を簡略化します。

吸収線量の測定

γ線の物質による吸収線量は、単位質量当たりに吸収されたエネルギーと定義されます。
空気などの気体の場合、γ線で生じた二次電子の量を、電離箱を用いて測定し、吸収エネルギーを求めます。
しかし、 γ線のエネルギーが大きくなると、電離箱内ですべてのエネルギーが空気の二次電子を生成せず、電離箱の箱材
の二次電子を生成します。
このため、ブラッグ・グレイの空洞原理を基に、箱材で生成した二次電子を利用した空洞電離箱法で測定して補正します。

空洞電離箱の条件

空洞電離箱は、グラファイトやアルミなどの導電性材料の内部に空洞をつくり、中に空気を充填し、内部に陰・陽極を設置した電離箱で、次のことが必要です。
・箱材の内壁が絶縁体のときは、炭素などを薄く塗布し、導電性を持たせる。
・箱の壁は、材料中の二次電子の飛程より厚いこと。
・空洞の大きさは、生成した電子-イオン対のイオンの飛程より小さいこと。

電離量の測定

空洞電離箱にγ線を照射すると、空気と壁面材料のそれぞれと相互作用し、二次電子が生じるので、その電荷量を電離箱で測定します。
これで測定された電荷をQ[C]とすると、生成電子数Nは次式となります。
N=Q/e
ただし、eは電子の素電荷で、e=1.6×10-19[C]
いま、気体の質量をm[kg]、W値をw[eV]とすると、吸収線量Dgは、
Dg=w・N/m
このDgから周りの壁物質の吸収線量Dmは、次式で与えられます。
Dm=Dg・a/b
ここで、aは二次電子に対する壁物質Hの平均質量阻上能、bは空洞気体の平均質量阻止能です。
この比a/bはγ線のエネルギーにより大きく変化せず、60Coのγ線で、壁物質がアルミおよびグラフアイトでそれぞれ0.88と1.01です。

放射線測定の統計的誤差

統計的誤差・系統的誤差の概要

放射性核種は、平均的に半減期に従って壊変しますが、短い時間でみると、同じ時間間隔でも壊変の数は一定ではありません。
このため、計測結果は一定にならず変動します。
このような測定値の不確かさは統計的誤差と呼ばれます。
これに対し、放射能の計測値が常に10%大きく表示されるなど、測定法や装置により生じる測定結果の偏りがあります。
これは系統的誤差と呼ばれます。
放射線の測定結果にはこれらの誤差が含まれますが、測定値が真の値からどのくらい離れているかを知ることが重要です。
誤差のうち系統的誤差は、例えば放射能がわかっている標準線源を測定して偏りの大きさを求め、それを基に補正できます。
一方、統計的誤差は補正できませんが、次の方法で大きさを見積もります。

標準誤差

線源からの放射線を一定の計数時間(t)で繰り返し測定した場合、時間当たりの計数率nは一定にならず、常にばらつきが生じます。
このばらつきの分布はポアソン分布と呼ばれる確率分布に従います。
計数率nの平均計数率(期待値)をMとすると、計数率がnとなる確率P(n)は、
P(n)=Mn・eM/n!
で表されます。
計数率nが20程度まで大きくなると、このポアソン分布で表される計数率の確率分布は、ガウス分布に近づきます。

ガウス分布の場合、σ=√Mで与えられるσを標準偏差といい、分布の広がりを表します。
ガウス分布では、測定点の平均値Mから標準偏差(±1σ)の大きさの範囲(信頼区間)に真値が入る確率は68%で、外れる確率は32%です。
標準偏差の2倍の幅±2σではそれぞれ95%、5%で、幅が±3σでは99.7%で、わずか0.3%が外れます。

一回測定の標準誤差

計数時間tで計数値Nを得た場合、計数率nとσは次式で与えられます。
n±σ=N/t±√(N/t)=n±√(n/t)

誤差の伝播

測定によってはいくつかの測定値を四則演算して結果を算出します。
この場合には、それぞれの測定の統計的誤差が合成されます。
例えば、試料の計測値からバックグラウンドを引く場合、計数時間tで全計数値N(計数率n)を、計数時間tbでバックグラウンド計数値Nb(バックグラウンド計数率nb)を得たとすると、正味の計数率n0とその標準偏差σは次式で与えられます。
n0±σ=(N/t-Nb/tb)±√{(√N/t)2+(√Nb/tb)2}=(n-nb)±√{(n/t2+nb/tb2

検出限界値の決定

強度が極めて弱い放射線の測定を行う場合、対象とする放射線の計数値がその測定器の持つバツクグラウンドの計数の統計的揺らぎに埋もれるため、検出できる最低のレベルである検出限界値(検出下限値)が存在します。
検出限界値n1は、バツクグラウンド計数率nbと測定時間tに依存し、誤差の許容値を示す定数をkとすると、次式で与えられます。
n1=(k/2)(k/t+√{(k/t)2+4nb(1/t+1/tb)}

空気・表面汚染モニタリング

モニタリングの種類

放射線を取り扱う施設では、放射線業務従事者と一般公衆の放射線防護を目的とし、放射線のモニタリングを行う必要があります。

放射線モニタリング

・放射性核種(同位元素)を取り扱う施設内の作業環境モニタリング
・放射線業務従事者自身の被ばく管理を行う個人モニタリング
・一般公衆の防護のための施設周辺環境モニタリング

施設内の作業環境モニタリングの検査項目は、次の3つです。

・外部放射線検査:外部被ばくの原因となるγ線の線量率の測定
・空気汚染検査:空気中のガス状および粒子状の放射性物質量の測定
・表面汚染検査:放射性物質をこぼした場所などの放射性物質量の測定

空気汚染検査

空気汚染モニタリングの目的

空気汚染のモニタリングは、気体や粉塵などの放射性物質の作業環境における空気中濃度が、空気中濃度限度などを超えていないことを確認するとともに、その環境下で働く作業者の個人内部被ばく量の線量当量評価を的確に行うための情報を収集することが目的です。

モニタリングの区分

作業環境のモニタリングは、次の3種に区分されます。
・日常モニタリング:作業環境の日々の空気汚染レベルの変動を監視
・作業モニタリング:汚染が起こるおそれのある作業中の濃度の変動を監視
・特殊モニタリング:放射線防護計画を立てるのに必要なデータの収集

モニタリングの方法

空気汚染のモニタリングには、施設規模や目的により、次のものがあります。
・一般モニタリング:作業室の排気ダクト内の空気を測定し、空気汚染を監視
・集中モニタリング:複数の作業室の空気を一括して測定し、空気汚染を監視
・特定場所モニタリング:汚染が生じるおそれのある作業場の空気汚染を監視
・局所モニタリング:局所的に発生する空気汚染の分布状況を連続して監視

表面汚染のモニタリング

表面汚染のモニタリングは、管理区域内の作業環境、作業者の身体および管理区域からの搬出物の表面にある放射性物質の量を、一定の限度以下に保つことを目的として行う測定および評価をいいます。

表面汚染の表面密度

放射性核種を含む溶液や粉末が飛散し、それらが沈着したり、身体または物体の表面を汚染したりした状態を表面汚染といいます。
単位表面積に存在する放射能を表面密度といい、その単位はBq・cm-2です。

表面汚染モニタリングの目的

表面汚染モニタリングの目的には、次のものがあります。
・放射能汚染の拡大の防止
・放射性物質の封じ込めの失敗や良好な作業手順からの逸脱の検知
・作業環境や皮膚の汚染を管理基準値以下に制限
・モニタリング計画および実験計画を立てるのに必要なデータの収集

表面汚染モニタリングの種類

表面汚染モニタリングは、次の3種に区分されます。
・日常モニタリング
連続的な作業の作業環境が適切な状態にあるか、汚染の封じ込めが良好かなどを管理基準と比較して確認する
・作業モニタリング
汚染が発生する可能性のある作業を対象とし、その結果から作業方法や保護具などの検討、汚染モニタリングの必要性を判断する
・特殊モニタリング
日常モニタリングなどで高レベルの汚染を発見したときなどに、その原因を究明し、対策に必要な情報を得る

表面汚染の管理基準

表面汚染の管理基準は法令により、次のように定められています。
・放射線施設内の人が常時立ち入る場所の表面密度限度は次のとおり。
①α線を放出する核種:4Bq/cm2
②α線を放出しない核種:40Bq/cm2
・管理区域から持ち出される物品は、放射線管理の手を離れ、一般公衆と直接接触するおそれがあるなどから、次のように表面密度限度の1/10にする。
①α線を放出する核種:0.4Bq/cm2
②α線を放出しない核種:4Bq/cm2
日常モニタリングでは、多くの場合、これらの限度よりさらに小さい値を実際の管理基準値に設定しています。

表面汚染の形態

表面汚染の形態には、
・放射性物質が固着して取れにくい固着性汚染(fixed contamination)
・比較的取れやすい遊離性汚染(loose contamination)
の2つがあります。
この2つの区分に定量的な境界はなく、便宜上、ろ紙などでふき取ることのできる汚染を遊離性汚染と定義します。
ただし、固着性汚染でも時間の経過とともに遊離性汚染になることがあります。
遊離性汚染は、次の問題があります。
・蒸発、飛散などで空気を汚染し、摂取や経皮などで体内に取り込まれる
・蒸発、飛散などで汚染範囲を拡大させる
・表面密度が高い場合には外部被ばくの原因になる

表面密度の測定法

表面密度の測定法には、直接測定法と間接測定法があります。
①直接測定法(サーベイ法)
・汚染検査用サーベイメータで対象物表面を直接、走査しながら測定する
・測定値は遊離性と固着性汚染の和となる。すなわち全汚染量を測定する
・点状汚染の検出や汚染の広がりの程度を調べるのに有効
・測定中に外部放射線による被ばくを受けやすい
・検出できる最小の表面密度(検出限界)が小さい
②間接測定法
・対象物表面の一定面積(通常100cm2)を、ろ紙、化学雑巾などでふき取り、付着した放射能を測定する(スミア法)
・測定値は遊離性汚染のみとなる
。測定はGM計数管、ガスフロー式あるいはシンチレーション計測器を用いる
。試料の採取後、放射能の測定を汚染から離れた場所でできるため、外部放
射線による被ばくが小さくなる
。局部的な汚染を見落とす可能性がある
スミア法では、試料のふき取り効率が重要です。ふき取り効率は、試料採取前
の試料表面に存在する遊離性汚染の放射能と、 1回のふき取りでろ紙などに付着
する放射能の比で表されます。ふき取り効率の計算には、次の値が使われます。
・表面が非浸透性の材料:50%
・表面が浸透性の材料:5%
・表面がそれ以外の材料:10%

表面汚染の除染その他

汚染が見つかった場合は、汚染の範囲と量を調べ、ふき取って汚染の拡大を防ぎます。
さらに、水や中性洗剤、必要に応じてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)のようなキレート剤で除染します。
なお、汚染箇所の放射能分布を測定するため、イメージングプレート(IP)を用いることもあります。

廃液処理と廃棄処理

放射性核種を含む排水と排気

放射性核種(同位元素)を含む溶液の排水や空気の排気では、その濃度を排水濃度限度または排気中濃度限度以下に抑える必要があります。

排水濃度限度、排気中濃度限度および空気中濃度限度

排水濃度限度は、事業所境界における排水中濃度の3月間平均濃度
排気中濃度限度は、排気回の放射性核種の3月間平均濃度について定められた濃度限度
空気中濃度限度は、放射線業務従事者が常時立ち入る場所で、人が呼吸する空気中の放射性核種の1週間についての平均濃度の限度

排水や排気をする場合には、この濃度限度以下にすることが必要です。
排水濃度限度は、その水を人々が生まれてから70歳になるまでの期間、飲料水として飲み続けたとき、経口摂取による内部被ばくの平均線量率が1年当たり1mSvに達するという仮定で核種ごとに計算された濃度です。
排気中濃度限度も同様の考えでつくられています。
2種類以上の放射性核種がある場合、それぞれの濃度をその濃度限度で割った値の和が1以下になる濃度で排水、排気します。

排水設備

排水設備は、排液処理装置、排水浄化槽、貯留槽、希釈槽、排水口などで構成されます。
・排液処理装置:液体廃棄物を濃縮などで、放射性物質を分離、処理します。
・排水浄化槽:貯留槽、希釈槽などで構成され、廃液を浄化、希釈します。
・貯留槽:放流前の廃液を貯留し、放射性物質濃度および水質を調査します。
また、半減期の短い核種の放射能が減衰するのを待つために使われます。
・希釈槽:廃液中の放射性物質濃度が濃度限度を超えているとき、希釈水を加え、濃度限度以下にするための設備です。

廃液の放出法

廃液の放射線濃度が排水濃度限度を超えた場合は、次の方法で対処します。
・廃液の濃度が排水濃度限度以下になるよう希釈してから放流。
・半減期が短い核種では、壊変で廃液中の濃度が排水濃度限度以下になるまで放置してから放流。

排気設備

排気設備は排気管、排気浄化装置、排風機、排気筒などで構成されます。
排気浄化装置:排気回の放射性物質の濃度を管理基準以下にするために設置。
プレフィルタ、HEPAフィルタ、活性炭(チャコール)フィルタなどで構成。
・プレフィルタ:ガラス繊維などでつくられたフィルタ。
HEPAフィルタの上流側に設置し、大きな粒子を捕集してHEPAフィルタの耐用期間を延ばす。
・HEPAフィルタ(高性能エアフィルタ):サブミクロンの微粒子を捕集。
定格風量で0.3μm径の微粒子を99.97%以上の捕集効率で捕集する性能を有する。
・活性炭フィルタ:無添着活性炭は無機性ヨウ素を捕集。添着活性炭(トリエチレンジアミン:TEDA)は有機性ヨウ素を捕集。

非密封放射性核種の取り扱い

非密封放射性核種における実験計画の留意点

密封されていない放射性核種(同位元素、RI)を用いた実験の際には、作業者の外部・内部被ばく線量を最低限度に抑え、他の作業者や一般公衆の外部・内部被ばくを防止して安全を確保するため、あらかじめ実験計画を立てることが必要です。
実験計画の内容には、次のような項目などが挙げられます。
・実験手順の構築
・被ばく、汚染防止対策
・排気、廃液や廃棄物の取り扱い
・試料の保存法
・緊急時の処置
・被ばく線量の推定と遮へい

実験手順の構築

実験作業者が受ける被ばく線量は、線量率と作業時間との積ですから、作業時間は可能なかぎり短くなるように実験方法を立案します。
実際の実験では、さまざまな化合物が混在する複雑な系となる場合が多く、そのために綿密な実験計画を立て、時間の短縮を図ります。
また、実験操作の自動化装置や市販の試薬キットを導入し、手作業にかかる時間を短縮します。
初めての実験の場合は、RIを用いる実験(ホツトラン)の前に、同じ実験をRIの代わりに安定同位体を用いて行い(コールドラン)、実験操作手順や必要な器具類の確認を行って、作業計画を精密化します。

被ばく・汚染防止対策

RIからの放射線被ばくを防止するために、遮へいの設置、眼鏡や手袋などの保護器具の着用が必要です。
また、空気汚染による内部被ばくを生じない作業環境をつくることが重要です。
飛散率が高い実験は、フードやグローブボックス内で行います。

排気、廃液や廃棄物の取り扱い

排水では貯留槽中の排水前の廃液に含まれる放射性核種の濃度・化学形、半減期、廃液内の濃度、貯留槽および希釈槽の容量を考慮します。
排気では同様に、濃度・化学形に応じて排気装置のフイルタや捕集材料の選定流量の設定などを考慮します。

緊急時の処置

緊急時には人命救助をすべてに優先させます。
安全の保持、通報、汚染拡大の防止の三原則に従って行動します。

飛散の防止

RIを扱う実験には放射性気体などを放出するものがあります。
このような実験は、フードやグローブボックス内で行います。
フードとグローブボックスは、非密封の放射性物質を使用する実験で、作業者および環境への放射性汚染、ならびに作業者の内部被ばくを防止するために、放射性物質を閉じ込める設備です。

フードとグローブボックス

フードは少量の低レベルの非密封放射性物質を取り扱うために実験室に設置され、 トレーサ実験や簡単な分析作業などに使用されます。
一方、グローブボックスは、プルトニウムなどの危険度の高い放射性物質や高汚染が発生しやすい実験に使います。

フードとグローブボックスの使い分け

使用する放射性物質と量に応じてフードを使うかグローブボックスを使うかが定められています。
グローブボックスの方が使用放射線能量の基準値が高く設定されています。
また、フード内の実験では、同じ放射能でも操作方法によって使用量の限度が変わります。
例えば、危険度が高いと考えられる乾式で、粉末を発生させる操作などでは簡単な化学的操作、分析と比べて使用数量を0.01倍に留めます。
この数値を修正係数といいます。

有機標識化合物の純度測定

有機標識化合物は、比放射能が低く、低濃度なので、高濃度の有機化合物で使われる融点や沸点測定による化学的純度の測定はできません。
このため、比放射能が一定になるまで精製を繰り返す方法がとられます。
放射化学的純度は、同位体希釈分析法により求めます。

有機標識化合物の保管法

RIを貯蔵施設で保管するときは、内容器にRIを入れ、その容器を外容器にしまいます。
線源が入った内容器表面の汚染を調べるには、スミア法を用います。
また、有機標識化合物を長時間保存すると、自己放射線で溶液中にラジカルが生じ、それが化合物を分解して不純物が生じます。
これを抑えるために、次のようにします。
・比放射能を低くする。
・放射能の濃度を低くする。
・少量ずつ分けて保管する(放射線による相互の影響を避けるため)。
・溶液にラジカルスカベンジヤー(水溶液ではエタノールやベンジルアルコールなど)を数%添加する。
・溶媒が凍結しない範囲の低温で保存(水溶液で2~4℃、ベンゼンで6~10℃)
・容器の壁面を透過するy線の放射性核種や制動放射線を放出する32Pなどの強いエネルギーのβ線核種などのそばに化合物を置かない。

点線源からの放射線による実効線量

実効線量率定数

実効線量率定数は、放射能の線源が1点に集中しているとき(点線源)、この線源からある距離の位置の空間線量率を実効線量率で表すための換算係数です。
これを用いると、ある地点の実効線量率は、次式で与えられます。
I=A・C・Fa・t/L2
ここで、
I:計算地点における実効線量(μ Sv)
A:放射能(MBq)
C:線源の実効線量率定数(μ Sv・m2・MBq-1・h-1)
Fa:実効線量透過率(線源と計算地点間にある遮へい体を通る放射能の透過率)
t:使用時間(h)
L:線源から計算地点までの距離(m)
すなわち、放射能と時間に比例し、距離の自乗に逆比例します。
また、遮へい体があるとそれに遮へいされた分だけ減少します。

作業による内部被ばくの防止

内部被ばく防止の5原則

非密封の放射性核種(RI)の取り扱いでは、内部被ばくを防止するための、次の注意事項(2C3Dの原則、3D2Cともいう)が知られています。

2Cの原則

・閉じ込め(contain):RIと人体が直接接触しないようにする。
・集中化(concentrate):RIの分散を防ぎ、集中管理を行う。

3Dの原則

・希釈(dilute):可能な限り低濃度で用いる。
・分散(disperse):換気、廃液の希釈などを行う。
・除去(decontaminate):放射性汚染の除去を行う

非密封放射性核種(Rl)の取り扱い

非密封のRIを取り扱う作業をする場合、それらを吸入するなどで内部被ばくの原因となるので、作業では次の防止策をとります。

管理区域内へ入るとき

・個人用のRI実験専用の実験服を装着する。
・個人ごとの被ばく線量計を装着する。
・マスクを装着する。(RIの使用量が多い、揮発性RIを扱うなどの場合には、活性炭入りのマスクを使用する。)
・手袋および保護眼鏡または保護面を装着する。
・身体の露出部を少なくする。袖をまくるなどで皮膚をさらさない。
・退出するときは、ハンドフツトクロスモニタ(手、足および衣服用の表面汚染密度測定装置)で汚染のないことを確認する。
・なるべく不要なものを持ち込まない。
・管理区域内で喫煙、飲食、化粧を行わない。

Rl実験時

【共通事項】
・実験は補助者と一緒など必ず2人以上で行う。
・非密封のRIを取り扱う操作は、ポリエチレンろ紙を敷いたトレイ内で行う。
・RIの入ったバイアル(ガラスびんにゴム製の栓をつけた試料入れ)は直接手で扱わず、ピンセットやトングなどを使う。
・実験中、1作業工程ごとにサーベイメータで手足、衣類、実験台などの汚染検査を行う。
・水溶液を減容するときは、溶液の撹拌や沸騰石を使用して溶液の突沸を防ぐ。
【吸入摂取の防止】
・実験はフードの中で行う。
・飛散、揮発の大きい場合や汚染を生じやすい実験の場合には、基準値に従い、グローブボックスを用いる。
・飛散、揮発の起こるおそれのある操作を避ける実験計画を立てる。
【経口摂取の防止】
・口で吸うピペットは使わず、安全ピペッタやマイクロシリンジを用いる。
・物に触れる場合は、ポリエチレン袋やペーバータオルなどを介して行う。
・RIを入れた容器、例えば溶媒抽出の分液ロートを手で持つときは、ペーパータオルなどを介する。
【経皮吸収の防止】
・手その他の露出部の傷の有無を点検する。
・手に傷のある場合はなるべく実験を行わない。
・手を頻繁に洗う。
・可能なら作業終了後にシャワーを浴びる。

主な核種の性質と取り扱い

3H

半減期:12.3年
主な放射線:β線18.6keV(最大)
空気中最大飛程:6mm
水中最大飛程:6×10-3mm
汚染モニタ:スミア法+液体シンチレーション検出器
必要遮へい(線量を1/10に減じるために必要な遮へい、以下同様):なし
<注意点>
・さまざまな化学形態で空気中に放出されるので注意が必要。
・直接モニタが困難なので、定期的にスミア試験でモニタする。
・皮膚を透過して吸収されるので、適切な手袋の着用が必要。
・3H標識チミジンなどは水より生物学的半減期が長いので注意が必要。

14C

半減期:5730年
主な放射線:β線0.156MeV(最大)
空気中最大飛程:24cm
水中最大飛程:0.28mm
汚染モニタ:薄い端窓型GM計数器
必要遮へい:10mm厚のアクリル樹脂板
<注意点>
・二酸化炭素の捕集にはアルカリ性水溶液に通す。
・いくつかの有機化合物は手袋を透過する可能性があるので注意する。
・実験操作でCO2やCOを発生させないように注意する。

18F

半減期:110分
主な放射線:β+壊変で0.51 MeVの2本の消滅放射線
汚染モニタ:電離箱式サーベイメータ
必要遮へい:10mm厚のアクリル樹脂板および鉛板

32P

半減期:14.3日
主な放射線:β線1.709MeV(最大)
空気中最大飛程:7.9m
水中最大飛程:0.8cm
汚染モニタ:GM計数器
必要遮へい:10mm厚のアクリル樹脂板でβ線を遮へい、制動放射線は鉛で遮へい
<注意点>
・摂取すると骨に蓄積する。生物学的半減期が長いので注意が必要。
・放射能測定にチェレンコフ光も利用できる。
・研究用に使用されるRIの中で最も高いエネルギーを持つので注意が必要。
・多量に取り扱う場合は、指にリングバッジを着用する。
・鉛入りのゴム手袋を使用する。
・容器などを支える場合は、スタンドやホルダーを使用する。

35S

半減期:87.4日
主な放射線:β線0.167MeV(最大)
空気中最大飛程:26cm
水中最大飛程:0.32mm
汚染モニタ:薄い端窓型GM計数器
必要遮へい:10mm厚のアクリル樹脂板
<注意点>
・Fe35SにHClを加えると、H2Sガスが発生する。
・バイアルは換気のよいドラフト内で使用する。

45Ca

半減期:163日
主な放射線:β線0.257MeV(最大)
空気中最大飛程:52cm
水中最大飛程:0.62mm
汚染モニタ:薄い端窓型GM計数器
必要遮へい:10mm厚のアクリル樹脂板
<注意点>
・摂取すると骨に蓄積する。生物学的半減期が長いので注意が必要。

51Cr

半減期:27.7日
主な放射線:γ線0.320MeV(EC壊変9.8%)、X線5keV(22%)
1GBqの点線源から距離lmにおける線量当量率:4.7μ Sv/h
汚染モニタ:Nal(Tl)シンチレーション検出器
必要遮へい:3mm鉛板
<注意点>
クロム酸塩類の形では身体の全体に分布する。

60Co

半減期:5.27年
主な放射線:β線318keV、娘核の60Niよりγ線1.17MeV、1.33MeV
汚染モニタ:Nal(Tl)シンチレーション検出器
必要遮へい:鉛板
<注意点>
酸性水溶液中では2価、酸素では3価に酸化する。標準線源に使用。

90Sr

半減期:28.8年
主な放射線:β線546keV
汚染モニタ:GM計数管式検出器
必要遮へい:10mm厚のアクリル樹脂板

123I

半減期:13.2時間
主な放射線:γ線159keV
汚染モニタ:NaI(TI)シンチレーション検出器

125I

半減期:59.4日
主な放射線:γ線35keV(7%放出、93%内部転換)、Te特性X線27-32keV
1GBqの点線源から距離1mにおける線量当量率:41 μ Sv/h
汚染モニタ:薄型NaI(TI)シンチレーション検出器
必要遮へい:0.02mm鉛板

128I

半減期:25.0分
主な放射線:γ線443keV
汚染モニタ:NaI(Tl)シンチレーション検出器

131I

半減期:8.03日
主な放射線:β線606keV、娘核が131mXeで364keVのγ線を放出
<すべてのヨウ素に共通する注意項目>
・ヨウ素化合物溶液に酸化剤を加える、酸性にする、加熱すると飛散する。
・フードやグローブボックス内で取り扱う。
・吸着材として有機アミン添着活性炭を含むマスクを着用する。

137Cs

半減期:30.1年
主な放射線:β線512keV、娘核が137mBaで663keVのγ線を放出
汚染モニタ:GM計数管式検出器やNaI(TI)シンチレーション検出器
必要遮へい:鉛板

237Np

半減期:214万年
主な放射線:α線
汚染モニタ:ZnS(Ag)シンチレーション検出器
必要遮へい:なし
<注意点>
・加水分解しやすいので、水溶液系ではできる限りpHを低く保つ。
・半減期が長いので、紫外・可視光の吸収測定で濃度を求められる。

241Am

半減期:433年
主な放射線:α線5.49MeV、γ線59.5keV
汚染モニタ:ZnS(Ag)シンチレーション検出器
必要遮へい:鉛板
<注意点>
・加水分解しやすいので、水溶液系ではできる限りpHを低く保つ

放射性核種の体内への取り込み

内部被ばくの注意点

内部被ばくは放射性核種が体内に取り込まれることにより起こります。
外部被ばくでは、主に透過力の高いX線やγ線が問題となります。
内部被ばくでは、それ以外に透過力が低いα線やエネルギーが小さいβ線でも生じます。

放射性核種の取り込み

放射性核種が体内に取り込まれる経路には、経口摂取、吸入摂取、経皮吸収(創傷からの侵入を含む)の3つがあります。

経口摂取は、主に放射性核種を含む飲食物を摂取することにより体内に取り込むことをいいます。
経口摂取された放射性核種の消化管吸収率は、ヨウ素のように高いものからプルトニウムのように非常に低いものまであり、吸収率は放射性核種の種類により異なります。

吸入摂取は、133Xeなどの気体状物質や酸化プルトニウムなどの微細粒子状の放射性核種を呼吸によつて吸い込むことです。

経皮吸収は、皮膚からの体内への取り込みです。
健康な皮膚にはバリア機能があるため、最も注意すべきなのは創傷からの取り込みです。

このようにして放射性核種を取り込んだ場合には、体内移行性の高い物質であれば血液中に入ります。

放射性核種の集積

血液中などに入った放射性核種は、その化学的性質によって特定の臓器に集積します。
これを臓器親和性といいます。
吸入摂取や経皮吸収により放射性核種を取り込んだ場合にも、体内移行性の高い放射性核種であれば、経口摂取とほぼ同様な挙動をとります。
粒子状の放射性核種を吸入した場合、粒径により沈着する呼吸器系の部位が異なります。
粒径が大きい場合、主に鼻粘膜に沈着しますが、不溶性の放射性核種の場合は、粘膜上皮細胞による繊毛運動などにより、その多くが排出されます。

放射性核種の排出

組織に沈着した放射性核種の多くは、主に尿、便により体外に排出されます。
放射性核種の放射能は、それぞれの核種で物理的に決まっている物理的半減期Tpで減少していきますが、内部被ばくを考える場合は、体内に取り込まれた放射性核種の物理的半減期だけではなく、その物質が体内にどの程度の時間とど
まっているかも重要な因子となります。
体内に取り込まれた放射性核種は、排泄などで体外へ排出されますが、体内の物質量が半分になるまでの時間を生物学的半減期Tbといいます。
また、有効半減期はTe=Tb・Tp/(Tb+Tp)となります。

内部被ばく量の測定

放射性核種による人の汚染は、身体内部に取り込まれた汚染と体表面汚染に分類されます。
身体内部に取り込まれた放射性核種を測定。
評価する方法として、体外計測法、バイオアッセイ法、空気中濃度計算法などがあります。

ホールボディカウンタ(全身カウンタ)

ホールボディカウンタは、体内に残留した放射性核種が放出するγ線やX線を体外から直接測定する体外計測法です。
これらによる内部被ばく量のモニタリングに使用されます。
この検出器には、核種の同定が必要な場合はNaI(Tl)シンチレーション検出器や、エネルギー分解能が高く放射性核種の同定が容易なGe半導体検出器が使用されています。
ただし、後者は冷却が必要となるという欠点があります。
なお、汚染核種がわかっていて核種同定の必要がない内部被ばくモニタリングには、プラスチックシンチレーション検出器が使用されます。
ホールボディカウンタは、バックグラウンド放射線による計数を少なくするための遮へい室に設置されます。
測定エネルギー範囲は、54Mn、60Coなどの放射化生成核種や131I、137Csなどの核分裂生成核種を主な測定対象とするので、おおむね100keV~2MeVです。
測定エネルギーの校正には、その範囲に応じた複数の核種を用います。
測定に際しては着衣や体表面に汚染がないことの確認が必要です。
また、体内に自然に存在する40Kからの放射線の影響を考慮する必要があります。
体内放射能の評価精度はバイオアッセイ法に比べて高くなります。

簡易型ホールボディカウンタ

簡易型ホールボディカウンタは、簡易な遮へいを施した椅子あるいは寝台と、一般に鉛遮へい体付NaI(Tl)シンチレーション検出器を使用した装置で、原子力発電所などの事業所で体内汚染の検査に広く使用されています。

バイオアッセイ法

バイオアッセイ法は、放射性物質を摂取した人の尿や便、また必要に応じて呼気、血液および毛髪などの放射能を測定し、摂取量を推定する方法です。
この方法は、すべての核種が測定対象で、 γ線やX線だけではなく、飛程の短い35Sのようなβ線や、239Puのようなα線を放出する核種にも適用できます。
特に90Srなどのβ線だけを放出する核種に適します。
検出装置としては、液体シンチレーションカウンタによる放射線の測定やICP
質量分析計による放射性核種量の定量が主として用いられます。
α線やβ線放出核種による内部被ばくが疑われる場合には、排泄物などの生体試料の放射能測定から線量評価を行います。
便の場合には、排泄されたものの全量を3~7日間にわたり採取する必要があります。
尿・便の分析により得られた測定結果から、国際放射線防護委員会(ICRP)により示されている代謝モデルを用いて摂取量を評価するのが一般的です。
しかし、排泄率などのパラメータの個人差による誤差に注意が必要です。

肺モニタ

α線放出核種である239Puゃ241Amを吸入し、肺に沈着した場合、239Puのα壊変で放出される235Uからの17keVのLX線や、241Amからの59.5keVのγ線を身体外部から検出して定量する装置を肺モニタといいます。
検出器には、NaI(Tl)シンチレータまたは逆同時用計数管を内蔵する大型比例計数管が用いられます。
検出限界は、1時間の測定で500~10000Bq程度です。
しかし、体内での吸収の補正や、肺中での239Puの分布の相違の補正などのため、正確な定量は困難です。
この他に、甲状腺など特定の器官に着目し、その器官に沈着している放射能の測定を目的とした甲状腺モニタなどがあります。

鼻スミア測定

放射性物質の吸入摂取が考えられる場合には、鼻孔内の汚染物を綿棒などでふき取って採取し、その放射能を測定する鼻スミアを行います。
この評価法は、試料の放射能と摂取量との相関性の点から線量評価精度は低くなります。

空気中濃度計算法

空気中放射能から計算する方法では、環境中の放射能をダストモニタなどによって計測する、または飛散量から放射性物質の空気中濃度を算出し、この値と被ばく者が立ち入った時間内の呼吸量とから、体内に摂取された放射性核種の放射能を算出します。
この場合も、呼吸率などのパラメータが必ずしも個人の実際の値と一致しているわけではなく、また空気中放射能濃度と摂取量の関係が一様ではないので、摂取量の評価精度は高くありません。

放射化その他の測定法

人体が中性子線に被ばくすると、体内の生体元素が放射化します。
この放射化物の量を測定することで、被ばく線量を推定できます。

その他の被ばく線量の推定法に、バイオドシメトリがあります。

体表面汚染の測定

β線、 γ線放出核種による体表面汚染の測定には、GM計数管式サーベイメータを主に用います。
α線放出核種による汚染の測定には、ZnS(Ag)シンチレーション式表面汚染検査用サーベイメータを主に用います

創傷部位の汚染の測定

創傷部位を生理食塩水で洗浄、除染し、その際の洗浄液を回収して放射能測定のための試料として用います。

空気中の放射性物質の捕集

空気中の放射性核種濃度の測定には、試料の捕集が必要です。
捕集は試料により、さまざまな方式がとられます。
・粒子状放射性物質:繊維系ろ紙を用いたろ過捕集方法(ダストサンプラ)。
ただし、気体状のRIも、ろ紙に捕集される場合がある
・14CO2:水酸化ナトリウムまたはモノエタノールアミン水溶液への吸収
・85Kr:四塩化炭素への吸収や活性炭粉末への吸着/沸点の差を利用した空気からの分離
・気体状のヨウ素:活性炭カートリッジ
CH3I:トリエチレンジアミン担持の活性炭
・貴ガス:活性炭カートリッジ
133Xeなどの放射性貴ガス:ガス捕集用電離箱
・3H:水の場合:直接捕集、シリカゲルやモレキュラシープによる団体捕集、水バブラーによる液体捕集/コールドトラップによる冷却凝縮捕集
・水素ガスの場合:バラジウム触媒で水に変えた後、上記捕集法を適用

このように捕集された放射性核種を定量し、捕集装置への吸引平均流量、捕集効率および捕集時間の値から放射性核種の空気中濃度を算出します。

除染治療

放射性物質による体内汚染がわかった場合には、医師の判断に基づき、生物学的影響を低減するための除染治療を行います。
除染治療では、摂取した放射性物質の種類や摂取経路などを踏まえ、適切な方法を選択します。
体内に吸収された放射性物質の除去処置としては、次のものがあります。

イオン交換剤の投与

放射性ヨウ素を吸入すると、甲状腺に集積します。
このとき、安定ヨウ素剤のヨウ化カリウムを予防的あるいは摂取後速やかに投与すると、それが甲状腺に集積し、放射性ヨウ素を吸入したときにそれが甲状腺に集積するのを阻止します。

プルシアンブルーの投与

137Csを摂取した場合には、必要に応じて医師の処方に従ってプルシアンブルー(紺青)を投与します。
この薬剤はセシウムと結合し、コロイドとなり便として排泄され、消化管からの吸収を阻止します。

キレート剤の投与による体外排泄促進

重金属などと可溶性キレート錯体を形成し、尿への排泄を促します。
キレート剤としては対象金属に応じて、次のものが使われます。
・ぺニシラミン:コバルトや銅などの重金属
・DTPA:プルトニウムやアメリシウムなどの超ウラン元素

利尿剤の投与

主に腎臓から排泄される核種については、利尿剤を投与します。

胃の洗浄および下剤の投与

胃腸などの消化管からの吸収を低減します。

飲水

3Hを含む水蒸気の吸入、3Hを含む水を誤飲した場合の体内汚染の除去には、水分摂取を行い、利尿剤を投与することが有効です。

清浄な空気の呼吸

133Xeなどの放射性気体の体内からの除去には、清浄な空気の呼吸が有効です。
これらの処置は、体外排泄効果をモニタリングし、その継続の可否を判断します。

被ばく線量の評価

被ばく線量の評価では、測定された放射能量(測定値)から放射性核種を摂取した時点の体内量(摂取量)を推定する必要があります。
体外計測法では、測定値を放射線検出器の計数効率で除して、測定時の体内放射能量を推定します。
摂取量は体内放射能量÷残留率で推定します。
バイオアッセイ法では、主に尿や便などに含まれる放射能量から1日当たりの排泄量を評価し、摂取量は1日当たりの排泄量÷排泄率により推定します。
放射性核種の体内量は、測定された試料中の放射能を、摂取した核種の人体における代謝データに当てはめて求めます。
排泄物の分析結果の解釈には、国際放射線防護委員会(ICRP)の示した排泄率関数を用います。

管理区域の設定とモニタリング

管理区域の設定

放射性物質の取り扱い、あるいは放射線発生装置の使用をする事業所などでは、放射線作業を行う区域を限定し、適切な管理を行う管理区域を設けます。
区域は線量、空気中放射能濃度および表面汚染密度について、次の基準を超えるおそれのある場所に設定するように定められています。
・外部放射線の線量:実効線量が3月当たり1.3mSv
・空気中の放射性物質の濃度:3月間の平均濃度が空気中濃度限度の10分の1
・放射性物質で汚染された表面の密度:表面汚染密度限度(α線を放出するもの:4Bq・cm2、α線を放出しないもの:40Bq・cm2)の10分の1
・外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくが複合するおそれのある場合は、線量と放射能濃度のそれぞれの基準値に対する比の和が1

常時人が入る場所の線量

管理区域内で常時人が入る場所には、線量などが次のように定められています。
・外部放射線の線量:実効線量が1週間当たり1mSv以下
・空気中の放射性物質の濃度:3月間の平均濃度が空気中濃度限度以下
・放射性物質で汚染された表面の密度:表面密度限度以下

事業所などの境界の外における線量限度

事業所などの境界の線量限度は、実効線量で1年間につき1mSV以下と定められています。

管理区域の作業環境モニタリング

管理区域内における作業環境管理では、次の3種の測定を行います。
・外部放射線に係る線量の測定(ただし、測定は1cm線量当量について行う)
・物の表面の放射性核種の密度の測定
・空気中の放射性核種の濃度の測定
また、外部放射線に係る線量の測定は、放射線作業を開始する前に1回と、作業後に定期的に行います。
作業後の線量測定については、非密封放射性核種を取り扱う作業は、 1月を超えない期間ごとに1回行います。
ただし、固定された密封放射性核種と放射線発生装置を取り扱う作業で取扱方法や遮へいに変更がない場合には、6月を超えない期間ごとに1回行います。

積算線旱の測定法

積算線量を求める方法には、サーベイメータで測定し、放射線源や放射線発生装置の使用時間より算出する方法と、放射線測定器を用いて連続的に測定し、積算線量を実測する方法があります。
また、後者には、蛍光ガラス線量計などの簡便法で1月または6月の積算線量を求める方法があります。
γ線のエリアモニタとしては、GM計数管やNaI(TI)シンチレーション検出器などが用いられますが、NaI(Tl)シンテレーション検出器は感度が高いので、管理区域境界など低線量率場の測定に適します。

β線と中性子線の測定

β線の測定には電離箱、GM計数管などが使われます。
中性子線の測定にはレムカウンタが使われます。

外部被ばく防護の3原則

外部被ばくで問題となるのは、γ線(X線)が主です。
このγ線による被ばくを低減するための3原則が「遮へい」「距離」「時間」です。
外部被ばく線量は、作業場所の放射線量率と被ばく時間の積で決まります。
このため、放射線の線量率を下げること、および被ばく時間の短縮が求められます。

遮へい

放射線源と作業場所の間に遮へい物を置くと、線量率は線減弱係数と遮へい物の厚さの積の指数関数で減少する。

距離

放射線の線量率は線源からの距離の自乗に逆比例して減少する。
作業場所はなるべく線源から遠い位置にする。

時間

X線写真撮影などでは、装置の特性上線量率を減らすことが困難。
このような場合には、撮影枚数を限定して作業時間を短縮する。

自然放射線被ばくと、人が受ける放射線被ばく

人が受ける放射線被ばく

人が受ける放射線被ばくは、放射線業務に従事する者(放射線作業者)とそれ以外の一般公衆とで異なる管理がなされています。
また、被ばく量も、自然界にある原始放射性核種などからの被ばく、レントゲン写真などの医療行為による被ばく、放射線業務に伴う被ばくに分けて管理されています。

自然放射線による被ばく

自然放射線は、次のように分類されます。
・宇宙線(地球外の字宙空間から飛来する一次宇宙線と、一次宇宙線が大気と相互作用して生成する二次字宙線)
・宇宙線起源核種からの放射線
・原始放射性核種からの放射線

宇宙線

一次宇宙線のほとんどは、太陽起源の粒子に比べ、エネルギーの高い銀河宇宙線起源のもので、組成は98%が原子核、残り2%のほとんどが電子です。
原子核では、87%が陽子(水素の原子核)、12%がα線(ヘリウムの原子核)、残り1%がさらに重い核で構成されます。

二次宇宙線は、陽子、中性子、電子、γ線、パイオン(π中間子)およびミュー粒子などからなります。
地表では、ミュー粒子の寄与が相対的に大きいのに対し、高度が上がると中性子の寄与が急激に増加して、民間航空機が飛行する高度約11kmでは中性子による被ばくが最も大きな割合を占めます。

地上では、地球の地磁気によって宇宙線の一部が遮へいされます。
しかし、南極や北極などの高緯度地域は、赤道近くと比べて遮へいが小さいので、宇宙線由来の線量が多くなります。

約11年周期の太陽活動で太陽磁場が弱い時期は、銀河宇宙線量は増加します。
さらに、太陽の黒点付近で起こるフレアと呼ばれる活動で、高エネルギーのプラズマ粒子が大量に放出されたときには、航空機の乗客などの被ばく量が増加することもあります。

宇宙線起源核種

宇宙線起源核種は、宇宙線が大気中の酸素や窒素などの元素と衝突して生成される放射性核種で、14Cや3Hなどがあります。
これらの核種は、体内に取り込まれることにより、内部被ばくの原因となります。
なお、宇宙線および宇宙線起源核種による被ばくは、原始放射性核種による被ばくと比べ小さな量です。

原始放射性核種

原始放射性核種とは、地球の誕生時から存在してきた放射性核種で、主なものは40K、 トリウム系列核種およびウラン系列核種の3種類です。
原始放射性核種は、地殻、岩石・土壌、海水、建材、人体など、ほとんどすべての物質中にさまざまな濃度で含まれています。
地殻や岩石などの違いにより合まれる放射能濃度はまちまちで、地域による自然放射線の線量が異なる原因となっています。
例えば、日本国内では、放射性核種を多く含む花こう岩が広く分布している西日本のほうが東日本より自然放射線の線量は高くなる傾向があります。
また、 トンネル内での自然放射線の線量は大きくなり、湖や川の上では小さくなります。

一般公衆と放射線作業者

・一般公衆 :放射線業務に従事しない者をいいます。
・放射線作業者:原子力施設、放射線利用施設、病院などで放射線業務に従事する者をいいます。
・職業被ばく :業務を遂行するうえで放射線に被ばくすることをいいます。

放射線作業者に対しては、放射線による障害の発生を防止するために、被ばく線量を把握するための測定を行うことが法令で義務づけられています。

医療用放射線の被ばく

一般公衆が受ける自然放射線および人工放射線による1人当たりの年間実効線量は、世界平均値に比べ日本の推定値は大きいです。
これは、日本において医療用放射線による被ばく線量が大きいためです。
レントゲン検査などの医療用放射線によって平均3.87mSv/年の被ばくを受けています。

自然被ばく

自然放射線被ばくでは、ラドンによるものが重要で、ウラン鉱山など、その濃度が非常に高い場所での疫学調査で肺がんの過剰発生が認められています。
ラドンには、天然に存在する放射性壊変系列であるウラン系列の途中にある226Raが壊変して生成される222Rnと、 トリウム系列である221Raが壊変して生成される220Rnがあります。
これらは歴史的経緯から、ウラン系列の222Rnをラドンと呼び、 トリウム系列の220Rnをトロンと呼びます。
岩石や土壌に含まれるラジウム226Raが壊変して貴ガスであるラドンとなり、空気中に散逸します。
ラドン自体は貴ガスのため、被ばく線量に対する寄与は小さく、ほとんどが子孫核種の吸入により気管や肺胞に付着し、それらから放出されるα線が発がんの要因となります。
この226Raは、家屋建築資材の石や土にも含まれますが、木材中には含まれません。
海外の家は石でつくられたものが多く、そこに含まれる226Ra由来のラドンにより室内のラドン濃度が高くなりますが、木造建築が多い日本ではラドン濃度が低く、自然放射線源による被ばくのうち、ラドンによる線量は世界平均に比べて低い値です。
一方、日本では魚を内臓まで食べるため、そこに含まれる鉛、ポロニウムを経口摂取し、被ばくする線量が多くなります。
これらを含め、自然放射線による年間実効線量の世界平均は約2.4mSv、日本の平均は約2.1mSvです。

日航空機乗務員の被ばく

宇宙線による線量率は高々度で高くなり、民間航空機が飛ぶ高度11km付近では、地表に比べて約100倍高くなります。
これによる成田-ニューヨーク間の往復による被ばく量は、約0.1~0.2mSv程度です。
この空路を年間数往復する飛行機の乗務員は、一般公衆の線量限度である年間1mSvを超える場合があります。
国際放射線防護委員会(ICRP)は1990年勧告で、航空機乗務員の被ばくが職業被ばくであるとの見解を示しました。
これに応じ、日本では航空機乗務員の被ばく線量を年間5mSv以下とするように自主管理を促すガイドラインを策定し、国内の航空会社に通達しました。

半導体メモリのソフトエラー

半導体メモリは、素子内に小さなコンデンサを持ち、そこに蓄えられた電荷の量でデータを記録します。
蓄えられた電荷量が変わると、記録されたデータが失われます。
これをソフトエラーといい、一過性の故障ですぐに回復します。
宇宙線は、地球大気との核反応でlGeV以上のエネルギーを持つ中性子を発生させますが、これが半導体メモリのコンデンサ部分に照射され、ある一定以上の電離を起こすと、メモリ内容の反転などの誤動作を引き起こします。
従来は、放射線レベルの極めて高い宇宙環境で使用する人工衛星や加速器施設などにおいてのみ問題となっていましたが、メモリの小型化に伴うコンデンサ容量の低下により、線量が小さい航空機内や地表面でも大きな問題となっています。

放射線作業者の数

我が国の放射線作業者数は、医療分野の放射線作業者数の増加により近年増加傾向を示しています。
医療分野の放射線作業者数は、全放射線作業者数の約50%を占めています。

宇宙線ラジオグラフィ

ニ次宇宙線のミュー粒子は、極めて高いエネルギーで長い飛程を持つことがあり、地下数kmまで到達するものも存在します。
このミュー粒子の量をいろいろな方向から測定し、飛程に沿った物質の平均密度を求め、それを画像化する方法を宇宙線ラジオグラフィといいます。
火山の内部構造や事故で破損した福島の原子力発電所の炉心状態を調査するのに使用されました。

放射線防護とICRP

放射線防護体系

放射線被ばくや放射性物質による汚染から人間とその環境を防護し、放射線障害の発生を防止することを放射線防護といい、次の3つの段階があります。
・科学的知見の収集・評価
放射線影響研究/放射線安全研究:国連科学委員会(UNSCEAR)や各国の委員会の報告書など
・放射線安全基準策定
国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告・報告書、原子力・放射線安全行政
・各国の放射線防護の枠組み(法令、指針等)

国際放射線防護委員会(ICRP)

ICRPは、1928年に設立されたイギリスの独立事業団体で、科学的、公益的見地に立ち、放射線被ばくによるがんやその他疾病の発生を低減すること、および放射線照射による環境影響を低減することを目的としています。
組織は、主委員会と5つの専門委員会(放射線影響、線量概念、医療被ばくに対する防護、勧告の適用、環境の放射線防護)で構成されます。
放射線防護に必要な科学的データ、放射線利用の状況、放射線防護の技術水準などを検討し、放射線防護の考え方(理念)、被ばく線量限度、規制のあり方などが委員会勧告として出版され、世界各国の放射線被ばくに関する規制や安全基準作成の参考として利用されています。

ICRP勧告は、次の2つの防護を目的にしています。
①人の健康に対する防護:放射線による被ばくを管理・制御することで、確定的影響を防止し、確率的影響のリスクを合理的に達成できる程度に減少させる。
②環境に対する防護:有害な放射線影響の発生を防止、または頻度を低減させる。

被ばくの種類

ICRPでは規制のため、被ばくの種類として前節3項の「職業被ばく」と「公衆被ばく」以外に「医療被ばく」の3つに定義しています。
これらは、同一の個人が異なる種類の被ばくを受けてもそれを考慮する必要がないと勧告しています。
すなわち、放射線作業従事者として被ばくする可能性のある個人が、医療行為により被ばくした線量を、職業被ばくの規制に係る線量に加算する必要はありません。

被ばく状況の区分

1990年勧告では、線量を加える「行為」と、線量を減らす「介入」の2つに区分していますが、2007年勧告では「計画被ばく状況」「緊急時被ばく状況」「現存被ばく状況」の3つに区分し、放射線防護への対応を行います。
①計画被ばく状況
線源を意図的に導入・運用する状況です。
これには、発生が予想される被ばく(通常被ばく)と、発生が予想されない被ばく(潜在被ばく)があります。
後者には、計画からの逸脱、事故、悪意ある事象などで生じる被ばくが含まれます。
②緊急時被ばく状況
予想しない状況から発生する好ましくない結果を避けたり減らしたりするために緊急の対策を必要とする状況です。
③現存被ばく状況
管理の導入の検討が必要とされる長期にわたる被ばくが存在する状況です。
例えば、緊急時被ばく状況後の被ばく状況などがあります。

防護の原則

ICRP勧告では、被ばく状況の区分とともに、行為に対する次の3つの防護体系の原則を定めました。
①行為の正当化の原則
「放射線被ばくを伴ういかなる行為も、その導入が正味でプラスの便益を生む」こと。
この原則では、放射線の使用に限定されず、放射線を使わない他の代替案の中から最適なものを探すことも含まれます。
②防護の最適化の原則
「社会・経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成できる限り低く被ばく線量を制限する」こと(ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則)。
この最適化は、将来の被ばくを防止または低減することを目的としています。
③線量限度の適用の原則
「患者の医療被ばくを除く計画被ばく状況で、規制された線源から受けるいかなる個人への総線量が、ICRPが勧告する線量限度を超えるべきではない」。
この規制の線量限度値は、ICRP勧告などを基に、規制当局が定めます。

これら3原則のうち、行為の正当化と防護の最適化の原則は、ある線源からの被ばくを考慮したもので、すべての被ばく状況に適用されます。
一方、線量限度の適用の原則は、ある個人が受けるすべての規制された線源を考慮した「個人関連」の線量評価で、計画被ばく状況において適用されます。

作業者の放射線からの防護

放射線業務従事者(以下、作業者)の防護の場合には、適切な作業環境管理のもとでの外部被ばく線量・内部被ばく線量の測定により、被ばく量が実効線量限度や、等価線量限度以下であることを確認します。
また、定期健康診断を実施し、放射線による発がん、遺伝疾患の発生を予防します。
なお、事故の対処のための緊急作業時には、別途の線量限度が設定されています。

なお、妊娠不能と診断された者および妊娠の意思のない旨を使用者などに書面で申し出た女性は、男性と同じ扱いになります。
また、これら以外の女性は緊急作業に従事することが禁止されています。

線量管理の対象者

被ばく線量管理の対象となる作業者は、放射性核種(同位元素)などの取り扱い作業などを行うために管理区域に立ち入る者です。
ただし、見学者などで一時的に立ち入る者の場合には、1cm線量当量の外部被ばくが100 μSvを超えるおそれがなく、放射性物質の摂取による内部被ばくの実効線量が100 μSvを超えるおそれがなければ、被ばく線量の測定は免除されます。

被ばく線量の測定

外部被ばく線量は、管理区域に立ち入っている期間中は連続して、1cm線量当量と70μ m線量当量をそれぞれ個人モニタ(蛍光ガラス線量計、TLDなどで測定します。

内部被ばく線量の測定は、放射性物質を摂取した場合には即座に、また放射性物質を摂取するおそれのある場所へ立ち入る場合には、男性は3月を超えない期間ごとに、女性(妊娠不能と診断された者を除く)は1月を超えない期間ごとに体内放射能量を測定しなければなりません。
体内放射能量の測定方法としては、ホールボディカウンタ、バイオアッセイ法または空気中放射能濃度からの計算により行います。
測定結果は外部被ばく線量と合計して被ばく線量の評価に使用します。

線量当量

線量当量

放射線防護の分野で使用する基本的尺度として、放射線障害量と比例関係にある物理量を基本とした、仮想的な線量が採用されています。
しかし、この線量の概念は、放射線と生物との相互作用に多くの因子を導入して組み立てたもので、物理的な量ではないので、この仮想的線量は測定できません。
このため、この代わりに、サーベイメータや個人用線量計で測定でき、かつ一般の被ばく条件で被ばく線量が常に実効線量を上回ることなく安全に評価できる量が必要となります。
そのため、1cm線量当量、および70μ m線量当量が導入されました(単位: Sv)。
1cm線量当量と70μ m線量当量は国際放射線単位測定委員会(ICRU:International Commission on Radiation Units and Measurements)によって定められた、ある場所の放射線の量を表す物理量の1つで、「人体組成を模擬した元素組成値を持つ直径30cmの球体(ICRU球)に放射線を照射し、その球表面から1cmまたは70μ mの深さの点での線量の値」のように定義されています。

1cm線量当量

X線やγ線を外部から人体の小さい面積に照射した場合、その強度は吸収や散乱により表面からの距離に従って指数関数的に減衰します。
しかし、広い面積を同時に照射した場合、体内で何度も散乱された放射線や二次的に生じた電子線などによる照射が加わる結果、表面より内部で吸収線量が増加します。
この現象をビルドアップといいます。
人体の場合、このビルドアップにより、皮膚の表面からおよそ1cmのところで、吸収線量が最大となります。
この深さにおける仮想的吸収線量を1cm線量当量といいます。
他のすべての深さにある臓器が、この最大となる吸収線量と同じ線量を吸収したと仮定すれば、実際の被ばく値は常に1cm線量当量で計算した値より小さいので、被ばく線量を過小評価する危険を避けられます。
この考えの基に、各臓器は、被ばくにより1cm線量当量を受けたとして、被ばく量の管理を行います。
多くの個人線量計やサーベイメータは、測定量として1cm線量当量で表示します。

70μm線量当量

人間の体は、表面から70μ m付近までは、角質層など死滅した表皮細胞で覆われているため、放射線の影響を受けません。
しかし、その内側は盛んに細胞分裂をしており、放射線の影響を強く受ける基底細胞があるので、皮 膚ではこの位置に相当する70μ m線量当量を被ばく量の算定に用います。

眼の水晶体も体の表面から1cmより外側の位置にあります。
このため、水晶体被ばくの等価線量は70μ m線量当量と1cm線量当量のうち、大きいほうの値を使用します。
なお、中性子線の場合は皮膚でも1cm線量当量を使います。

70μ m線量当量は皮膚と眼に使い、それ以外の臓器は1cm線量当量を使います。

等価線量と実効線量

被ばく線量の概念

1cm線量当量などは放射線が照射された場合の吸収線量を評価する値です。
しかし、被ばくの影響を定量的に評価する場合、
放射線による吸収線量が同じでも、
・放射線の種類によって生体が受ける影響が異なる。
・リンパ組織や造血組織などの放射線の影響を受けやすい臓器と、神経組織や筋肉組織のように受けにくい臓器など、臓器の種類によって影響が異なる。
また、全身を被ばくしたのか、指や足など特定の部位のみ被ばくしたのかによっても影響は異なります。
さらに、照射線量は計測機器で直接測定できますが、吸収線量は機器によって直接測定できません。
このため、放射線の種類が異なっても、全身が均等に照射されても不均等に照射されても、その数値が同じなら確率的影響が起こる確率が等しくなるという線量として実効線量の概念が導入されました。
また、全身被ばくに対する実効線量に対し、特定部位の被ばくに対して等価線量という概念が導入されています。
さらに、放射線モニタなどから得られる照射線量の測定値と、それが人体に影響を及ぼす実効線量を結びつけるために、1cm線量当量と70μ m線量当量が導入されました。

等価線量

密閉されていない放射性物質を手で取り扱う場合、全身に被ばくしていなくても手だけが被ばくすることがあります。
また、臓器親和性がある物質を吸収した場合、その臓器のみが選択的に被ばくすることがあります。
一方、生体が同じエネルギー量の放射線を吸収しても、中性子線や陽子線などの高LET放射線は、γ線などの低LETに比べて生物学的効果が大きくなるなど、放射線の種類により受ける影響が異なります。
等価線量は、個々の組織(臓器)がある放射線の被ばくを受けたとき、その組織に対する生物学的効果を勘案した放射線の線量をいいます。
等価線量は組織(臓器)の被ばく量に、その放射線の種類とエネルギーごとに定められた、放射線加重係数を乗じたものです。
単位は、J・kg-1で、名称としてシーベルト[Sv]を用います。
この等価線量値をその臓器の受けた線量とします。
例えば、眼が1mGy[J・kg-1]の放射線を受けた場合、その放射線がγ線なら等価線量は1mSv[J・kg-1]ですが、放射線がα線なら20mSvとなります

中性子線の係数は、エネルギーが0のとき2.5で、大きくなると係数も大きくなり、1MeV付近で約20の最大値に到達し、その後2.5まで減少します。
試験ではよくICRP 2007年勧告の値が出題されますが、現在、日本の規制ではICRP 1990年勧告の値が使われます。
違いは1990年勧告で、陽子はすべてのエネルギーで係数が5、中性子線はエネルギーの階段関数になっていることです。

実効線量

実効線量は、人体への放射線の照射が均一でも不均一でも、さらに放射線の種類が変わっても、値が同じなら同じ確率的影響が現れる線量をいい、全身の被ばく量の評価に使います。
実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に、各組織・臓器の相対的な放射線感受性を示す組織加重係数を乗じ、それをすべての臓器・組織について合計したものです。
単位はシーベルト[Sv]が用いられます。
つまり、全体としては同じ線量当量の放射線を被ばくしたとしても、どの部位が被ばくしたかによって放射線の影響が大きく変わります。

体幹部不均等被ばく

実効線量評価では15臓器の被ばく線量の測定値が必要ですが、現実の個人被ばく線量測定は頭部、胸、腹部など数か所のみです。
このような場合は、次式で実効線量Eを算出します。
E=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
ここで、Ha:頭部・頸部の1cm線量当量、Hb:胸部・上腕部の1cm線量当量、Hc:腹部・大腿部の1cm線量当量、Hm:各部位のうち線量当量が最大となる部位の線量当量です。

特定放射性同位元素

これまで放射線障害防止法は、放射線による障害防止のための規制でした。
近年、国際原子力機関(IAEA)から、放射性同位元素を使ったテロを防止するため、危険性の高い放射性物質と関連施設の防護措置の実施が勧告されています。
これに応じて、事業者に防護措置を義務づける改訂が行われました。

特定放射性同位元素

特定放射性同位元素は法律用語で、放射性核種(同位元素)の中で放射線が発散された場合、人の健康に重大な影響を及ぼすおそれがあるもので、種類または密封の有無に応じて定められた数量(D値)以上の放射性核種をいいます。
D値とは、未管理状態で放置した場合に、重篤な影響を引き起こす放射性核種ごとの放射能の量であり、数日から数週間で致死線量となる量をいいます。
非密封の特定放射性同位元素は、半減期が2日以上の放射性核種です。

防護措置にかかる区分設定

密封・非密封とも量に応じて区分され、管理基準などが異なります。

密封の特定放射性同位元素

貯蔵施設または廃棄物貯蔵施設に保管されている特定放射性同位元素の放射能(許可証に記載)をA、そのD値がDのとき、AをDで除した値Xにより、次の3つに区分されます。

区分1 X≧1000
区分2 10≦X<1000
区分3 1≦X<10
1つの貯蔵庫に複数の特定放射性同位元素を貯蔵している場合は、それぞれの特定放射性同位元素の放射能を(A1,A2,A3,……)、そのD値をそれぞれ(D1,D2,D3,……)とすると、Xは次式で与えられます。
X=A1/D1+A2/D2+A3/D3+……

非密封の特定放射性同位元素

貯蔵室または貯蔵箱に保管できる特定放射性同位元素の貯蔵能力(許可証に記載される貯蔵能力)または使用の場所における特定放射性同位元素の1日最大使用数量をA、その特定放射性同位元素のD2値をD2とすると、AをD2で除した値Xにより、次の3つに区分されます。
区分1 X≧1000
区分2 10≦X<1000
区分3 1≦X<10
1つの貯蔵室または貯蔵庫に複数の特定放射性同位元素を貯蔵する場合は、その放射能または使用の場所における特定放射性同位元素の1日最大使用数量をそれぞれ(A1,A2,A3,…)ヽD2値を(D21,D22,D23,……)とすると、Xは次式で与えられます。
X=A1/D21+A2/D22+A3/D23+……

特定放射性の使用例

特定放射性同位元素を使用する装置には、次のものがあります。
滅菌用線源、遠隔治療装置用線源、ガンマナイフ用線源、血液照射装置用線源、アフターローディング装置用線源、非破壊検査装置用線源、厚さ計、レベル計、測定器校正線源(セキュリテイ対策の強化に伴い追加)

施設における防護措置

特定放射性同位元素の防護を目的に、施設における防護措置の義務化や事業所外輸送時の防護措置が定められています。
それ以外に、特定放射性同位元素防護規程の策定、防護管理者などの選任も定められています。

防護区域の設定

特定放射性同位元素を使用・貯蔵する建屋の周辺に、侵入検知・警報システムなどの設置や見張人の配置を行って防護区域とし、特定放射性同位元素の不法な取得や妨害、破壊行為から防護します。
一般的に、特定放射性同位元素を取り扱う室や設置障壁の内側を防護区域として設定しますが、貯蔵箱や装置のみを使用
する場合、それらが設置されている室を防護区域として設定します。

情報漏洩の防止

外部からの不正アクセスを遮断するため、計算機などは外部ネットワークとの接続を遮断します。
また、ハードディスクのデータをコピーできないようにUSBメモリなどを接続できないようにします。
管理情報などを印刷した紙などは、鍵のついた書棚などに保管します。

緊急時の対応

事業所などでは、地震などの自然災害、火事などの事故、その他異常事態が生じる可能性があります。
このため、発生を想定し、予防措置、緊急時の対応および事後の対策を策定・実行することが必要です。

予防措置

緊急時の被害を最小限に抑えるため、あらかじめ次のような措置を行います。
・施設・装置の定期点検などを行い、被ばくや汚染の防止に努める。
・放射性物質を厳重に保管。管理して紛失や盗難を防止するとともに、火災発生時の被害を少なくする。
・発火性や爆発性のある物質などの持ち込みを制限し、火災の発生を防ぐ。
・緊急時にとるべき対応方法と対応手順、連絡体制、実施の主体者などを明確にしたマニユアルを作成する。
・各作業者が緊急時にとるべき行動を十分把握できるよう、定期的に防災教育や防災訓練を実施する。

緊急時の対応

自然災害時、事故時およびその他異常時ごとに、発生すると考えられる事態を想定し、負傷者の救助、各所への通報および汚染の拡散防止を最優先に行うこととして、それぞれの対応方法、対応手順、連絡体制を定めます。
対応には、緊急の種類に関わらず共通するものと、地震や火事などに特有のものがあります。

共通する対応

緊急時の対応の3原則は、次のとおりです。
①安全の保持
・物的損害より人の生命および身体の安全を優先し、人命救助を行う。
・現場が火事や放射性物質の漏洩などで危険な場合は、直ちに退避する。
②通報
・近くにいる作業者および放射線管理担当者に事故の発生を知らせる。
・火災などの危険がない場合、管理担当者の指示を受けて行動する。
・管理担当者などは消防署など関係機関に通報する。
③汚染拡大の防止
・はじめに事故の状況を判断し、初期に線源の移動・容器への保管などの拡大防止の手段を講じる。
・次に安全確認を行ったうえで、汚染発生の原因物質などを除去する。
・汚染か所を密閉し、拡大を防止する。
・現場への立ち入りや汚染物品の持ち出しを禁止する。

火災時の措置

・火災発生時は火災報知器などで知らせるとともに、初期消火、延焼防止その他、必要な措置をとる。
・燃えている線源は動かさない。
・火災時、火源近くの放射性物質はできるだけ遠くに移し、なわ張りなどをして人を近づけないようにする。
・水をかけて消火すると飛散などで汚染を広げるおそれがあるため、濡らした布で覆って消火する。 |
・遮へい用の鉛は融点が327℃と低く、溶けて線源が露出し、放射線被ばくが起こる可能性があるため注意する。
・非密封線源が加熱されると、気化や露出による周辺の汚染と放射線被ばくが起こり得るため注意する。
・フード内の火災では、フードの換気口を開じ、換気を止めてから消火する。

地震時の措置

・振動が収まつた後、火災発生の防止措置を行う。
・線源などの転倒や破壊などを防止するため、移動や保管の措置をとる。
・地震で非常口などがふさがれるおそれがあるため、緊急に避難する。

事後の措置

緊急事態が発生した場合は、その原因究明を早急に行い、改善策を講じます。
同時に、定期的に安全教育を実施し、再発防止に努めます。
・事故の原因を早急に解明し、改善策をとり、再発を防止する。
・上記改善策に応じてマニュアルを見直す。
また、これ以外にも常時マニュアルの見直しを行う。