商標法
商標の使用をする者に独占的な使用権を与えることにより、業務上の信用の維持を図って産業の発達に寄与するとともに、需要者の利益を保護することを目的としています。
商標権(地域団体商標)
目的: 地域ブランドの名称を「出所を示すマーク(商標)」として登録し、独占的に使用・保護する(アース国際特許商標事務所、特許庁)。
管轄: 特許庁
権利行使: 権利者自身が民事訴訟(差止、損害賠償)を起こす。
更新: 10年ごとの更新が必要。
商標と地域団体商標の主な違い
誰が・何を・どうやって登録できるかにあります。
通常の商標は個人や企業が自由に登録できロゴなども可能ですが、地域団体商標は組合などの団体が「地域名+商品名」のような文字商標を、地域ブランドとして「一定の周知性」をもって登録する制度で、一般には登録困難な地名入り商標を保護し、地域経済活性化を図ります
商標権の存続期間の更新登録申請
存続期間満了の6ヶ月前から満了日までの間に行うのが原則で、この期間内に商標権者(登録名義人)自身が「商標権存続期間更新登録申請書」を提出し、更新登録料を納付します。
もしこの期間を過ぎてしまっても、満了後6ヶ月以内であれば、更新登録料と同額の割増登録料を支払うことで更新可能です(ただし、この期間に申請できなかった場合、商標権は遡及して消滅します)。
地理的表示(GI)保護制度
目的: 生産地と結びついた品質・特性を持つ産品の名称(例:「夕張メロン」)を地域の「共有財産」として保護する。
管轄: 農林水産省(酒類は国税庁)
GI登録された産品は、農林水産省が定めた基準を満たした証であるGIマーク(登録標章)を付して販売できる。
商標法ではなく「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(GI法)」によって規定されており、商標登録とは別個の制度
商標権と地理的表示の違い
商標権が「出所表示」として名称を独占的に使う権利であるのに対し、GIは「地域の共有財産」として生産地と品質特性を結びつけて保護する点が異なります。
商標は権利者が自ら権利行使(差止請求、損害賠償請求)する
GIは農林水産大臣への通報で行政(刑事罰)も関与し、より強力な模倣品排除が可能。
両制度は併用可能で、GIは更新不要
商標とは
商標とは、取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
人の知覚によって認識できるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状もしくは色彩またはこれらの結合、音その他政令で定めるものと定められています。
動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標についても、商標登録ができ、知覚によって認識できるものです。
以下の種類があります。
・文字商標
・図形商標
・記号商標
・立体商標
・結合商標
・動きの商標
・ホログラム商標
・色彩のみからなる商標
・音商標
・位置商標
商標登録できないもの
・自他商品を識別できないもの(商標法第3条)
(普通名称、産地名、ありふれた氏名など)
・公益に反するもの(商標法第4条第1項第1号~第3号)
(公序良俗違反、国旗、公益機関の標章など)
・他人の権利を侵害するもの(商標法第4条第1項第8号~第11号)
(他人の登録商標や著名商標との類似、他人の氏名・肖像など)
そもそも他人のものと区別するためのものなので、自他識別能力がないものは登録できません。
慣用商標も識別不能なため登録できません。
指定商品・役務が非類似でも、他人の著名な商標と同一または類似の商標で出願した場合、需要者の間で出所の混同(親子会社などの誤認含む)を生じるおそれがあれば、商標登録を受けられない場合があります(商標法4条1項15号)。
商品の機能確保に不可欠な形状のみからなる商標は、商標法第4条第1項第18号により登録できません。
これは、自由競争を阻害せず、誰もがその形状を自由に使えるようにするためで、技術的な分野(特許・実用新案)で保護すべき内容であるためです。
商標の出願
区分ごとに願書に記載が必要。
1度の出願で1つの商標のみですが、複数の指定商品や指定役務を指定することができます。
補正が却下された場合は、補正却下決定の謄本送達日から3か月以内に補正却下決定不服審判を請求できます。
出願商標の指定商品のうち一部に拒絶理由があっても、商標登録出願を分割することができます。
商標登録出願には審査請求制度自体がありません。
商標出願は請求不要で、出願後すぐに審査が開始され、通常6ヶ月〜1年程度で審査結果が出ます。
出願公開制度が規定されています。
日本の商標登録出願は、出願後1~2ヶ月ほどで特許庁によって「出願公開」され、商標、指定商品・役務(サービス)、出願人情報などが一般に公開されます。
商標登録願書
・商標登録を受けようとする商標(文字、ロゴ、音など)
・指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分(1~45類から選択)
・商標登録出願人(氏名・名称、住所・居所)
・提出日
・あて先:特許庁長官 殿
・識別番号(あれば)
・電話番号(任意)
などを記載します。
特に、商標のタイプに応じた記載方法(標準文字、立体商標、音商標など)と、商品・役務の区分・内容を明確に記載することが重要
出願登録
商標は先に出願されたものと同一・類否の商標は登録できません。
登録査定の謄本送達日から30日以内に登録料が納付されることで、商標権の設定登録がされ、権利が発生します。
登録料は10年分を一括で納めることも、前後5年ずつ分割して納めることもできます。
存続期間の終了6か月前~更新が可能です。
拒絶理由通知を受けた場合の対応
意見書・補正書の提出
拒絶理由の内容(識別力不足、類似商標の存在など)を確認し、それらを解消するための反論や、指定商品・役務の絞り込み、分割、使用実績の証拠提出などを行います。
拒絶査定
意見書・補正書で解消されないと判断されれば「拒絶査定」となります。
拒絶査定不服審判
拒絶査定に対して不服がある場合、審判請求が可能です。
別途意匠登録出願
商標登録を諦め、その物品の形状(デザイン)を保護したい場合は、新たに意匠登録出願をすることが必要です。
商標は「識別力(特定のブランドと認識されること)」、意匠は「新規性・創作非容易性(デザインが新しいこと)」が主な要件であり、法律が異なるため、出願手続きも別個に扱われます。
登録の拒否
政府・地方公共団体が開設する博覧会の賞や、特許庁長官が定める基準に適合する国際的な博覧会(外国政府等主催の国際博覧会など)の賞と同一または類似の商標は、商標登録が拒否される(商標法第4条第1項第9号)
商標の類否
類否判断は、
・指定商品または指定役務が類似しているかどうか
・さらに商標が類似しているか
で判断されます。
外観・呼称・観念のそれぞれから、一般の取引者や需要者を基準に総合的に判断されます。
商標の類似性は、外観(見た目)、称呼(呼び名)、観念(意味・イメージ)の3要素だけでなく、取引の実情(具体的な取引状況)を総合的に考慮して判断されます。
各種異義申し立て
登録異議申し立ては、商標掲載官報の発行日から2か月以内であれば、誰でもできます。
商標登録無効審判は利害関係人のみ請求可能ですが、請求できる期間は登録後いつでも請求可能(5年経過後も可能)です。
ただし、登録から5年を経過すると請求できなくなる無効理由(例:登録要件を満たさないなど)が存在するため、5年以内であればより多くの理由で請求できる。
特許・意匠・商標の補正却下決定(特に審査段階での「要旨の変更」を理由とするものなど)に対して不服がある場合、「補正却下決定不服審判」を請求でき、その期間は補正却下決定の謄本送達日から3ヶ月以内(特許法・意匠法・商標法で規定)です。この期間内に請求がないと、拒絶査定が確定します。
不正使用取消審判
誰でも請求できます。
不使用取消審判は、(通常使用権者も含む)不使用期間が3年を経過したものに対して可能。
取消を免れようと直前(請求前3ヶ月〜登録日)に使い始めた使用は「正当な理由」がない限り、取消審判の請求人(攻撃側)が証明すれば、有効な使用とは認められず、登録が取り消される可能性がある(商標法第50条第3項)
不使用取消審判では、請求の対象となった指定商品・役務において商標権者が登録商標を使用していることが必要であり、類似商品・役務での使用では取消を免れることはできません。
商標権の更新
通常使用権者であっても,商標権の存続期間の更新登録の申請をすることはできない。
商標権の存続期間の更新登録を受けるためには,指定商品について登録商標を使用している事実が必要である。
更新登録の申請は10年毎にする必要があるり、満了前6カ月から満了日までにしなければならない。
商標権の移転
譲渡契約だけでは不十分で、特許庁への登録で初めて効力が発生します(商標法第35条)。
全ての指定商品・役務(全部移転)でも、一部のみ(分割移転)でも可能です。
指定商品・役務が2つ以上ある場合に、それらを指定商品・役務ごとに分けて、それぞれ独立した商標権に分割移転できる
先使用権
適用される条件
・他人の商標登録出願前から使用していること
・不正競争の目的でなく日本国内において使用していること
・他人の出願に係る商標及び指定商品・役務と同一類似の範囲内であること
・他人の出願の際現に、その使用している商標が自己の業務に係る商品、役務を表示するものとして需要者の間に広く認識(周知性)されていること
・継続してその商品・役務について、その使用する場合であること
裁判になったときには、先使用権を主張する人に立証責任があります
商標権の効力制限
登録商標が登録後に普通名称化(ジェネリック化)すると、商標権の効力が制限され(商標法第26条)、他人がその名称を使っても商標権侵害を主張できなくなることがあります
例として、ホッチキスやエスカレーターなど
商標権の侵害
商標権者は、粗悪な侵害品が流通して信用が害された場合、信用回復措置(謝罪広告の掲載など)を請求できます
また、差止請求権も有します。
不当利得返還請求や、信用回復のための措置(謝罪広告など)の命令も可能としており、粗悪品による信用毀損はまさに請求の対象となります。
商標登録の内容を記載した書面を提示して(提示がなくても)警告した後でも(警告前でも)、商標権侵害の停止・予防を請求できます。
特に、登録前でも「商標登録出願による権利」に基づき、警告後に使用した者には金銭請求権が発生し、商標権成立後は侵害行為(同一・類似範囲での使用)に対して差止請求や損害賠償請求が可能になります。
平成10年の法改正で「その登録商標の使用に対し通常受けるべき金銭の額」に相当する額を超える請求ができないという制限が撤廃され、現在では「侵害者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額」を損害額と推定できるようになり、請求できる範囲が広がりました
