意匠法
工業上利用できる物品の形状、模様若しくは色彩などの形態で処理された視覚を通じて生じる美感の保護及び利用を図ることによって、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする法律です。
意匠とは
意匠(デザイン)とは物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物の形状等又は画像であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます。
物品とは、市場で流通する形のある動産を良い、土地や不動産は該当しません。
需要者にとっての「美観」というのが大事です。
意匠の要件
・公然に知られた物は登録を受けられません。
・創作非容易性というのがあり、誰でも簡単に創作できる物は登録ができません。
・12か月以内の新規性喪失の例外規定の適用を受けるか、新規性のいずれかを満たさないと登録できません。
・他人の業務に関わる物品と混同する恐れがあるものは意匠登録を受けられません。
・物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる場合は意匠登録を受けられません。
*形状というのが大事であって、材質等であれば受けられる可能性がありません。
*一体不可分であることが必要です。
先願意匠調査
日本意匠分類、Dタームなどの分類が利用可能です。
意匠登録出願
願書には、出願人や創作者の氏名および意匠にかかる物品を記載しなければなりません。
一意匠一出願の原則があり、意匠ごとに出願をしなければなりません。
共有している場合は、共有者全員でないと意匠登録出願できません。
出願審査請求の制度はないので、原則として全ての意匠に対して審査が行なわれます。
登録意匠の範囲においては、特徴記載所の記載を考慮してはなりません。
設定登録後に発行される意匠公報によりはじめて意匠が公開されます。
拒絶理由通知があった場合は、意見書あるいは手続補正書、あるいは両方が提出可能です。
補正手続書自体は、事件が審査・審判・再審に係属していれば提出可能です。
特殊な意匠登録出願
・部分意匠
・動的意匠
・組物の意匠(全体として統一がある場合)
・関連意匠(いわゆるバリエーションで、本意匠の出願日から10年までに本人の出願が必要)
・内装の意匠
・秘密意匠
意匠の設定登録と存続
登録査定の謄本送達日から30日以内に1年分の登録料を納付すると設定登録がされ、権利が発生します。
設定登録後に意匠公報によりはじめて意匠が公開されます。
2年目以降も継続させたい場合は、前年以前に登録料を納付しなければなりません。
期限経過後も6か月以内であれば追納ができます。
存続期間は意匠登録出願の日から25年で終了します。
補正却下決定不服審判
補正が却下された場合は、その補正却下決定の謄本送達日から3か月以内に補正却下決定不服審判を請求することができます。
拒絶査定不服審判
拒絶査定の謄本送達日から3か月以内に不服審判を請求することができます。
通常実施権
通常実施権は、以下に認められています。
・職務創作
・先使用者
意匠権の効力範囲
同一のものはもちろん、類似する範囲にまで効力は及びます。
自分の登録意匠と他人の登録意匠の類似範囲が重なるときは、自分の登録意匠の範囲であっても実施が制限されます。
試験、または研究のためにする実施には効力は及びません。
類似意匠
類似する意匠を実施する権利を専有します。
類否についての判断
創作者ではなく、需要者の視覚を通じて起させる美観に基づいて行なわれます。
物品等及び形状等の両面から判断する。
どちらかが同一か類似、もう一方が類似の時に類似とされる。
例えば、物品(ボールペンとか)が同一、形状が類似の場合は、類似。
判定パターン 物品 形状 判定結果
A 同一 同一 同一
B 同一 類似 類似
C 類似 同一 類似
D 類似 類似 類似
E 類似 非類似 非類似
F 非類似 類似 非類似
意匠権侵害者への対応
以下が実施できます。
・差止請求
*一定の猶予期間を与える必要はない。
・損害賠償請求
・不当利得返還請求
・名誉回復措置請求
ただし、秘密意匠に関わる侵害については、過失の推定が適用されません。
なお、意匠登録無効審判の制度は規定されていますが、登録異議の申し立て制度は規定されていません。
秘密意匠
出願人は、意匠権の設定の登録の日から三年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができます。
意匠の公開時期と実施時期の調整を図ることが可能です。
延長や短縮が可能です。