物理

2024年3月6日

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放射線取扱主任者試験の物理区分のまとめとなります。
内容によって、物理や化学、生物などの内容がカテゴリー上またがったりしますので、ご注意ください。

運動量と運動エネルギー

運動量P = 粒子の速度v × 質量m

運動エネルギー = 1/2mv2

光は、粒子としての性質と波としての性質を持ちます。
粒子としては、質量が0となりますが、以下の式で表されます。

運動量 = プランク定数h × 振動数ν / 光の速さc

運動エネルギー = プランク定数 × 振動数ν

電子では、質量が小さいため、以下の式となります。

運動量 = mv/√(1-(v/c)2

静止エネルギーE = mc2

エネルギーE = mc2/√(1-(v/c)2

運動エネルギーT = エネルギー ー 静止エネルギー

ド・ブロイ波

電子などでは、粒子としての性質と波としての性質の両方をもっています。
粒子が振動しているという考え方をすることになります。

波長λ = プランク定数h / (質量m × 速度v) =h / 運動量P

原子の断面積

原子の断面積はおよそ 10-20m2です。
核の断面積は10-28m2です。
核の断面積を、核反応の特別な単位として、バーンと呼びます。

一般に断面積に比例して、粒子の衝突が起こりやすくなります。

SI単位(国際単位)における定義定数

SI単位(国際単位)では、7つの定義値があります。
従来の基本量や基本単位も使用されています。

対応する基本単位 定義定数の説明 記号 定義値
秒 (s) セシウム 133 原子の摂動を受けない基底状態の
超微細構造遷移周波数
ΔνCs 9 192 631 770 Hz
メートル (m) 真空中の光の速さ c 299 792 458 m/s
キログラム (kg) プランク定数 h 6.626 070 15 × 10−34 J s
アンペア (A) 電気素量 e 1.602 176 634 × 10−19 C
ケルビン (K) ボルツマン定数 k 1.380 649 × 10−23 J/K
モル (mol) アボガドロ定数 NA 6.022 140 76 × 1023 /mol
カンデラ (cd) 周波数 540 × 1012 Hz の単色放射の視感効果度 Kcd 683 lm/W

基本単位を組み合わせた単位が、特定の名称で表記されることもあります。
その場合は、別の特定の単位として表記されることがあります。

固有の名称と独自の記号を持つに到った22個のSI組立単位

単位の名称 単位記号及び基本単位による表現 他のSI単位も用いた表現
平面角 ラジアン rad = m/m
立体角 ステラジアン sr = m2/m2
周波数 ヘルツ Hz = s−1
ニュートン N = kg m s−2
圧力、応力 パスカル Pa = kg m−1 s−2 N/m2
エネルギー、仕事、熱量 ジュール J = kg m2 s−2 N m
仕事率、放射束 ワット W = kg m2 s−3 J/s
電荷 クーロン C = A s
電位差 ボルト V = kg m2 s−3 A−1 W/A
静電容量 ファラド F = kg−1 m−2 s4 A2 C/V
電気抵抗 オーム Ω = kg m2 s−3 A−2 V/A
コンダクタンス ジーメンス S = kg−1 m−2 s3 A2 A/V
磁束 ウェーバ Wb = kg m2 s−2 A−1 V s
磁束密度 テスラ T = kg s−2 A−1 Wb/m2
インダクタンス ヘンリー H = kg m2 s−2 A−2 Wb/A
セルシウス温度 セルシウス度 °C = K
光束 ルーメン lm = cd sr (注) cd sr
照度 ルクス lx = cd sr m−2 (注) lm/m2
放射性核種の放射能 ベクレル Bq = s−1
吸収線量、カーマ グレイ Gy = m2 s−2 J/kg
線量当量 シーベルト Sv = m2 s−2 J/kg
酵素活性 カタール kat = mol s−1

主な基礎物理定数(物性定数)

定数 記号 推奨値(注) 単位 相対標準
不確かさ
(1σ)
真空中の光の速さ c 299 792 458 m s−1 (定義値)
万有引力定数 G 6.674 30(15) × 10−11 m3 kg−1 s−2 2.2 × 10−5
プランク定数 h 6.626 070 15 × 10−34 J s (定義値)
h / 2π 1.054 571 817・・・ × 10−34 J s (定義値)
電気素量 e 1.602 176 634 × 10−19 C (定義値)
磁気定数(真空の透磁率) μ0 1.256 637 062 12(19) × 10−6 N A−2 1.5 × 10−10
電気定数(真空の誘電率) ε0 8.854 187 8128(13) × 10−12 F m−1 1.5 × 10−10
ジョセフソン定数 KJ 483 597.848 4・・・ × 109 Hz V−1 (定義値)
フォン・クリッツィング定数 RK 25 812.807 45・・・ Ω (定義値)
磁束量子 Φ0 2.067 833 848・・・ × 10−15 Wb (定義値)
コンダクタンス量子 G0 7.748 091 729・・・ × 10−5 S (定義値)
電子の質量 me 9.109 383 7015(28) × 10−31 kg 3.0 × 10−10
陽子の質量 mp 1.672 621 923 69(51) × 10−27 kg 3.1 × 10−10
陽子-電子質量比 mp / me 1836.152 673 43(11) 6.0 × 10−11
微細構造定数 α 7.297 352 5693(11) × 10−3 1.5 × 10−10
微細構造定数の逆数 α−1 137.035 999 084(21) 1.5 × 10−10
リュードベリ周波数 c R 3.289 841 960 2508(64) × 1015 Hz 1.9 × 10−12
ボルツマン定数 k 1.380 649 × 10−23 J K−1 (定義値)
アボガドロ定数 NAL 6.022 140 76 × 1023 mol−1 (定義値)
気体定数 R 8.314 462 618・・・ J mol−1 K−1 (定義値)
ファラデー定数 F 96 485.332 12・・・ C mol−1 (定義値)
シュテファン-ボルツマン定数 σ 5.670 374 419・・・ × 10−8 W m−2 K−4 (定義値)

放射線の定義(原子力基本法)

・α線、重粒子線、陽子線、その他の重荷電粒子線、β線
・中性子線、γ線、特性X線
・1MeV以上のエネルギーを有する電子線、X線

電離放射線

電離放射線とは、物質に電離作用を及ぼすことができる放射線のことです。
電離放射線が物質に入射すると、散乱や吸収によりエネルギーを与え、また電離や励起を起こします。

直接電離放射線

電荷を持つ粒子線(α線、β線など)は、それ自体が直接的に原子の軌道電子などに作用して、電離や励起を起こさせます。
このような放射線を直接電離放射線といいます。

間接電離放射線

電荷を持たない光子(X線、γ線など)や中性子線は、電子とは直接相互作用をしませんが、原子核と相互作用をして2次的に荷電粒子を発生させて、その荷電粒子が電離を起こすことがあります。
このような放射線を間接電離放射線といいます。

放射線に関する用語や単位

放射能

放射能とは、放射線を出す能力のことです。
単位時間あたりに壊変する原子数で定義されます。
単位は s−1 で、ベクレル(Bq)と言われます。

照射線量

光子の照射により、単位質量の空気中に発生した全ての電子ーイオン対が空気中で完全に停止するまでに作る、イオンの全電荷の絶対値と定義されています。
単位は C・kg−1です。
照射量率は、単位時間あたりの照射線量です。
単位は C・kg−1・s−1です。

吸収線量

吸収線量は、電離放射線の照射により単位質量の物質に付与されたエネルギーを図るための物理量です。
単位は J・kg−1となり、グレイ(Gy)と言われます。
吸収線量率は、単位時間あたりの吸収線量です。
単位は J・kg−1・s−1 あるいは、Gy・s−1です。

カーマ

カーマとは、非電荷放射線の照射により、物質内部の単位質量に生じた全荷電粒子の初期運動エネルギーの総和です。
単位は J・kg−1となり、グレイ(Gy)が用いられます。

フルエンス

単位面積あたりの放射線量を表します。

エネルギーフルエンス

飛行方向と垂直な単位断面積を通過する放射線の「エネルギー」を、断面積で割った量です。
多方面から来る場合は、球体の断面積で割った量となります。
単位は J・m-2となります。

粒子フルエンス

飛行方向と垂直な単位断面積を通過する放射線の「個数」を、断面積で割った量です。
多方面から来る場合は、球体の断面積で割った量となります。
単位は 個・m-2となります。

質量阻止能

荷電粒子がある物質を通過した際に、物質を励起や電離することで粒子が失うエネルギーを面積あたりの質量で除したものをいいます。
単位は MeV・cm2・g-1です。

質量エネルギー吸収係数

光子が物質と相互作用したとき、物質を電離や励起して二次電子を放出します。
このときに光子が物質に与えたエネルギーを面積あたりの質量で除したものをいいます。

電子ボルト

電圧差が1Vの2つの電極間で、1個の電子が得るエネルギーを1eVとします。
eVは電子ボルトといいます。
1eV = 1.6022×10-19J となります。

加速された電子の速度

運動エネルギーは、1/2mv2で表されます。
仮に、A電子ボルト[eV]で加速されたとすると、
A × 1.6022×10-19 = 1/2mv2

v=√(A×1.6022×10-19×2・M-1

つまり、同じ電圧で加速したとしても、軽い粒子ほど速くなります。

特殊相対性理論としてのエネルギーと質量の等価性

E=mc2 として、質量とエネルギーの定量的関係式が示されます。
これに、mとして炭素原子12の質量の1/12と定義される原子質量単位uの1.66054 × 10-27から、エネルギーに換算します。
m=1u=1.66054×10-27kg
c=2.9979×108m/s
e=1.6022×10-19C
E=mc2
計算すると、E/e=9.3144×108V となります。 つまり、E=931 MeV です。
なお、電子の静止エネルギーは0.511MeVとなります。