物理
放射線取扱主任者試験の物理区分のまとめとなります。
内容によって、物理や化学、生物などの内容がカテゴリー上またがったりしますので、ご注意ください。
運動量と運動エネルギー
運動量P = 粒子の速度v × 質量m
運動エネルギー = 1/2mv2
光は、粒子としての性質と波としての性質を持ちます。
粒子としては、質量が0となりますが、以下の式で表されます。
運動量 = プランク定数h × 振動数ν / 光の速さc
運動エネルギー = プランク定数 × 振動数ν
電子では、質量が小さいため、以下の式となります。
運動量 = mv/√(1-(v/c)2)
静止エネルギーE = mc2
エネルギーE = mc2/√(1-(v/c)2)
運動エネルギーT = エネルギー ー 静止エネルギー
ド・ブロイ波
電子などでは、粒子としての性質と波としての性質の両方をもっています。
粒子が振動しているという考え方をすることになります。
波長λ = プランク定数h / (質量m × 速度v) =h / 運動量P
原子の断面積
原子の断面積はおよそ 10-20m2です。
核の断面積は10-28m2です。
核の断面積を、核反応の特別な単位として、バーンと呼びます。
一般に断面積に比例して、粒子の衝突が起こりやすくなります。
SI単位(国際単位)における定義定数
SI単位(国際単位)では、7つの定義値があります。
従来の基本量や基本単位も使用されています。
対応する基本単位 | 定義定数の説明 | 記号 | 定義値 |
---|---|---|---|
秒 (s) | セシウム 133 原子の摂動を受けない基底状態の 超微細構造遷移周波数 |
ΔνCs | 9 192 631 770 Hz |
メートル (m) | 真空中の光の速さ | c | 299 792 458 m/s |
キログラム (kg) | プランク定数 | h | 6.626 070 15 × 10−34 J s |
アンペア (A) | 電気素量 | e | 1.602 176 634 × 10−19 C |
ケルビン (K) | ボルツマン定数 | k | 1.380 649 × 10−23 J/K |
モル (mol) | アボガドロ定数 | NA | 6.022 140 76 × 1023 /mol |
カンデラ (cd) | 周波数 540 × 1012 Hz の単色放射の視感効果度 | Kcd | 683 lm/W |
基本単位を組み合わせた単位が、特定の名称で表記されることもあります。
その場合は、別の特定の単位として表記されることがあります。
固有の名称と独自の記号を持つに到った22個のSI組立単位
量 | 単位の名称 | 単位記号及び基本単位による表現 | 他のSI単位も用いた表現 |
平面角 | ラジアン | rad = m/m | |
立体角 | ステラジアン | sr = m2/m2 | |
周波数 | ヘルツ | Hz = s−1 | |
力 | ニュートン | N = kg m s−2 | |
圧力、応力 | パスカル | Pa = kg m−1 s−2 | N/m2 |
エネルギー、仕事、熱量 | ジュール | J = kg m2 s−2 | N m |
仕事率、放射束 | ワット | W = kg m2 s−3 | J/s |
電荷 | クーロン | C = A s | |
電位差 | ボルト | V = kg m2 s−3 A−1 | W/A |
静電容量 | ファラド | F = kg−1 m−2 s4 A2 | C/V |
電気抵抗 | オーム | Ω = kg m2 s−3 A−2 | V/A |
コンダクタンス | ジーメンス | S = kg−1 m−2 s3 A2 | A/V |
磁束 | ウェーバ | Wb = kg m2 s−2 A−1 | V s |
磁束密度 | テスラ | T = kg s−2 A−1 | Wb/m2 |
インダクタンス | ヘンリー | H = kg m2 s−2 A−2 | Wb/A |
セルシウス温度 | セルシウス度 | °C = K | |
光束 | ルーメン | lm = cd sr (注) | cd sr |
照度 | ルクス | lx = cd sr m−2 (注) | lm/m2 |
放射性核種の放射能 | ベクレル | Bq = s−1 | |
吸収線量、カーマ | グレイ | Gy = m2 s−2 | J/kg |
線量当量 | シーベルト | Sv = m2 s−2 | J/kg |
酵素活性 | カタール | kat = mol s−1 |
主な基礎物理定数(物性定数)
定数 | 記号 | 推奨値(注) | 単位 | 相対標準 不確かさ (1σ) |
真空中の光の速さ | c | 299 792 458 | m s−1 | (定義値) |
万有引力定数 | G | 6.674 30(15) × 10−11 | m3 kg−1 s−2 | 2.2 × 10−5 |
プランク定数 | h | 6.626 070 15 × 10−34 | J s | (定義値) |
h / 2π | ℏ | 1.054 571 817・・・ × 10−34 | J s | (定義値) |
電気素量 | e | 1.602 176 634 × 10−19 | C | (定義値) |
磁気定数(真空の透磁率) | μ0 | 1.256 637 062 12(19) × 10−6 | N A−2 | 1.5 × 10−10 |
電気定数(真空の誘電率) | ε0 | 8.854 187 8128(13) × 10−12 | F m−1 | 1.5 × 10−10 |
ジョセフソン定数 | KJ | 483 597.848 4・・・ × 109 | Hz V−1 | (定義値) |
フォン・クリッツィング定数 | RK | 25 812.807 45・・・ | Ω | (定義値) |
磁束量子 | Φ0 | 2.067 833 848・・・ × 10−15 | Wb | (定義値) |
コンダクタンス量子 | G0 | 7.748 091 729・・・ × 10−5 | S | (定義値) |
電子の質量 | me | 9.109 383 7015(28) × 10−31 | kg | 3.0 × 10−10 |
陽子の質量 | mp | 1.672 621 923 69(51) × 10−27 | kg | 3.1 × 10−10 |
陽子-電子質量比 | mp / me | 1836.152 673 43(11) | 6.0 × 10−11 | |
微細構造定数 | α | 7.297 352 5693(11) × 10−3 | 1.5 × 10−10 | |
微細構造定数の逆数 | α−1 | 137.035 999 084(21) | 1.5 × 10−10 | |
リュードベリ周波数 | c R∞ | 3.289 841 960 2508(64) × 1015 | Hz | 1.9 × 10−12 |
ボルツマン定数 | k | 1.380 649 × 10−23 | J K−1 | (定義値) |
アボガドロ定数 | NA, L | 6.022 140 76 × 1023 | mol−1 | (定義値) |
気体定数 | R | 8.314 462 618・・・ | J mol−1 K−1 | (定義値) |
ファラデー定数 | F | 96 485.332 12・・・ | C mol−1 | (定義値) |
シュテファン-ボルツマン定数 | σ | 5.670 374 419・・・ × 10−8 | W m−2 K−4 | (定義値) |
放射線の定義(原子力基本法)
・α線、重粒子線、陽子線、その他の重荷電粒子線、β線
・中性子線、γ線、特性X線
・1MeV以上のエネルギーを有する電子線、X線
電離放射線
電離放射線とは、物質に電離作用を及ぼすことができる放射線のことです。
電離放射線が物質に入射すると、散乱や吸収によりエネルギーを与え、また電離や励起を起こします。
直接電離放射線
電荷を持つ粒子線(α線、β線など)は、それ自体が直接的に原子の軌道電子などに作用して、電離や励起を起こさせます。
このような放射線を直接電離放射線といいます。
間接電離放射線
電荷を持たない光子(X線、γ線など)や中性子線は、電子とは直接相互作用をしませんが、原子核と相互作用をして2次的に荷電粒子を発生させて、その荷電粒子が電離を起こすことがあります。
このような放射線を間接電離放射線といいます。
放射線に関する用語や単位
放射能
放射能とは、放射線を出す能力のことです。
単位時間あたりに壊変する原子数で定義されます。
単位は s−1 で、ベクレル(Bq)と言われます。
照射線量
光子の照射により、単位質量の空気中に発生した全ての電子ーイオン対が空気中で完全に停止するまでに作る、イオンの全電荷の絶対値と定義されています。
単位は C・kg−1です。
照射量率は、単位時間あたりの照射線量です。
単位は C・kg−1・s−1です。
吸収線量
吸収線量は、電離放射線の照射により単位質量の物質に付与されたエネルギーを図るための物理量です。
単位は J・kg−1となり、グレイ(Gy)と言われます。
吸収線量率は、単位時間あたりの吸収線量です。
単位は J・kg−1・s−1 あるいは、Gy・s−1です。
カーマ
カーマとは、非電荷放射線の照射により、物質内部の単位質量に生じた全荷電粒子の初期運動エネルギーの総和です。
単位は J・kg−1となり、グレイ(Gy)が用いられます。
フルエンス
単位面積あたりの放射線量を表します。
エネルギーフルエンス
飛行方向と垂直な単位断面積を通過する放射線の「エネルギー」を、断面積で割った量です。
多方面から来る場合は、球体の断面積で割った量となります。
単位は J・m-2となります。
粒子フルエンス
飛行方向と垂直な単位断面積を通過する放射線の「個数」を、断面積で割った量です。
多方面から来る場合は、球体の断面積で割った量となります。
単位は 個・m-2となります。
質量阻止能
荷電粒子がある物質を通過した際に、物質を励起や電離することで粒子が失うエネルギーを面積あたりの質量で除したものをいいます。
単位は MeV・cm2・g-1です。
質量エネルギー吸収係数
光子が物質と相互作用したとき、物質を電離や励起して二次電子を放出します。
このときに光子が物質に与えたエネルギーを面積あたりの質量で除したものをいいます。
電子ボルト
電圧差が1Vの2つの電極間で、1個の電子が得るエネルギーを1eVとします。
eVは電子ボルトといいます。
1eV = 1.6022×10-19J となります。
加速された電子の速度
運動エネルギーは、1/2mv2で表されます。
仮に、A電子ボルト[eV]で加速されたとすると、
A × 1.6022×10-19 = 1/2mv2
v=√(A×1.6022×10-19×2・M-1)
つまり、同じ電圧で加速したとしても、軽い粒子ほど速くなります。
特殊相対性理論としてのエネルギーと質量の等価性
E=mc2 として、質量とエネルギーの定量的関係式が示されます。
これに、mとして炭素原子12の質量の1/12と定義される原子質量単位uの1.66054 × 10-27から、エネルギーに換算します。
m=1u=1.66054×10-27kg
c=2.9979×108m/s
e=1.6022×10-19C
E=mc2
計算すると、E/e=9.3144×108V となります。 つまり、E=931 MeV です。
なお、電子の静止エネルギーは0.511MeVとなります。